1. はじめての夫婦ふたり旅は湯西川温泉へ

~あの日の自分に帰る旅~

懐かし旅

2014年2月 更新

はじめての夫婦ふたり旅は湯西川温泉へ

お寺のご住職を務めている石川さんは
夫婦ふたりで家を空けるわけにはいかず、これまで夫婦での旅行は皆無。
息子さんが修行を終えたことから、ようやく初の夫婦での旅行が実現した。

ご夫婦それぞれであれば全国各地に行ったことはあるが、ふたり揃っての旅行はこれが初。奥様が以前行ったこともある思い出の温泉地、湯西川温泉で開催されている「かまくら祭」を観に、東武特急スペーシアに乗車した。

石川美恵子(いしかわみえこ)さん
石川文英(いしかわぶんえい)さん

1948年(昭和23年)生まれの文英さんは千葉県にある妙好寺というお寺の住職さん。450年の歴史があるお寺を継いでいるご夫婦は、それぞれで別々に出かけることはあったが、ふたりきりで旅行することはなかった。お寺を留守にするわけにはいかなかったのだ。今回は、ようやく息子さんが修行を終えて跡継ぎとなることが決まったので、はじめてのふたりきりの旅に出られることになった。奥さまの美恵子さんは1953年(昭和28年)生まれで、栃木県出身。以前、檀家さんたちと訪れたこともある湯西川温泉へと向かうことにした。

石川美恵子さん、石川文英さん

10:00浅草駅出発!

浅草駅発の特急スペーシアに乗車。湯西川温泉へは東武スカイツリーラインから鬼怒川線経由で野岩鉄道へ入る。川治温泉を過ぎたトンネルのなかにある駅で下車する。

スペーシアの個室では美恵子さんがたくさんのお菓子とつまみをテーブルに広げ、早速車内販売でビールを購入。

美恵子さん(以下、美)「私は無類のビール好きなんです。ずーっとビール飲んでます」
文英さん(以下、文)「朝になると缶を捨てるところにビールの空き缶が山積みになってるんですよ。私はもともとそんなにビールは飲まなかったけど、影響されていまは結構飲みますね」


20年ほど前、子どもや孫を含む家族で沖永良部島への旅行予定があった。しかし檀家さんの不幸があり、急遽ご住職だけ行けなくなったことがあったという。

文「旅行の荷物のほかに、なにかあった場合を想定して私のものだけが入った風呂敷包みがあるんです。それを持ってひとり引き返しました」
美「そういえば10年ほど前にふたりで北海道にも行きましたね」

あれ? ふたりきりの旅ははじめてだったはずでは?

文「仕事ですよ。しかも日帰りでした」
それは旅ではないですね・・・・・・。

12:30湯西川温泉駅到着

湯西川温泉駅の改札を抜けると、「道の駅 湯西川」がある。土産物屋や食事処、温泉や足湯などの施設がある。
食事処で軽く昼食をとることにする。

文「鹿肉が入ったコロッケがあるんだ。『鹿コロ丼』にしよう」
美「私は有名なダムカレーにしよう。普通盛りの『川治ダムカレー』にします」

「鹿コロ丼」にもカレーがかかっていて少し驚いたが、おいしく完食。
湯西川温泉行きのバスを待つ。
その間、美恵子さんは地元の人と話し込んでいた。

文「私にできないのは、彼女のああいうところなんです。彼女は誰にでもすぐに話しかけられるんですよね」

美恵子さんは、温泉街には2日前くらいに降った雪が残っているらしいという情報を入手してきた。

14:15湯西川温泉に到着

「道の駅 湯西川」から日光交通のダイヤルバスに乗り、約25分。湯西川温泉に到着。
まずはそのまま「平家の里」を見てみることにする。
1985年(昭和60年)に、村内に残っていた民家を移築し、平家落人の暮らしや生活様式を再現した施設だ。

文「当時は(木杓子など)こういうものを作っていたのか」
美「800年前のものを引き継いでこういう施設に残すのは大変でしょうね。でもこうやって当時作っていたものなどを知ることができるんですからね」
文「茅葺きの手入れも大変だな」

平清盛と敦盛の等身大人形も設置されている。

美「すごく美男子だけど、本当にこんな顔だったのかしらね」
文「でもここの解説にも紅顔の美少年だったという逸話が書いてあるよ」
美「じゃあそうだったのね」

ご夫婦のお寺「妙好寺」の山門は2013年12月に茅葺きを敷き直して綺麗に生まれ変わった。
ここ「平家の里」の建物も一部の茅葺きを新たにしたという。自然とその辺にも目がいくおふたり。

文「うちのは板張りの上に茅葺きなので手間がかかった。ここは板がない、昔ながらの茅葺き屋根の形なので張り替えやすいだろうね」
美「茅の質はうちのほうがいいかもしれないわ(笑)」

15:30平家そばをいただく

「道の駅 湯西川」でご飯を食べたが、時間も経ったし歩いたし、少しお腹が減ってきたおふたり。
やはりここは平家そばを食べたいところ。
湯西川まで戻り、湯平橋から階段を降りると、平家集落がある。そこの建物を見て文英さんが言う。

文「この造りはかなり古いね」
そのとおりです。

このあたりにあるのは200年以上前の建物。朽ちてしまっているところもあるが、残しておくべき建造物なのだ。
そしてその奥にあるのが平家落人の菩提寺「慈光寺」。その隣が「平家そば 志おや」だ。ここで蕎麦をいただく。
建物自体は100年以上前のもので、お店も創業50年以上の老舗。
現在は2代目夫婦が経営している。店内はテーブル席と座敷がある。

ふたりが店に入ると同時に、毛並みの綺麗な猫が出ていった。心配して女将さんに聞くと「大丈夫」とのこと。「いままでお客さんの膝で寝ていたんですよ」と言う。

「平家そば」(1000円)は、濃い色の汁で少しだけ太めの手打ち麺に山菜と舞茸がたっぷり乗っている。汁の色の割に味は濃くない。

美「舞茸の香りがいいわね」
文「うん、これはうまい蕎麦だね」

店の梁などを見て、文英さんは
文「ここも古い建物だね~」
と言う。やはりひと目見てわかるようだ。

店の壁には「平家大祭」で行われたショーの写真が飾られている。
石川さゆりさん、牧村三枝子さんなどが歌っている。

美「やはり華やかな人たちがお祭りに来ていたんだね。800年前にこの地に来た平家落人のことを、400年前に子孫が知ったということですよね。華やかな人がお祭りに来るようになってよかったですよね」

確かに平家落人は静かに身を隠すように暮していた。しかしそれも昔のこと。現在はこうして祭りを大々的に行えるようになっている。
逃げ延びてきた祖先も喜んでいることだろう。
「志おや」の隣には平家落人が子孫繁栄を願い祈った子宝石がある。

階段の下にいた数名の観光客に向かって文英さん、「ここの蕎麦はおいしいよ!」

「平家そば」

平家集落にある豆腐屋さん

16:00温泉街を歩く

チェックインまで少し時間があるので、お土産を買いに行くことにする。
温泉街には「かまくら祭」に合わせてさまざまな雪だるまが店頭に並んでいる。それを見ながら歩くのも楽しい。

「ふる里本舗」へ立ち寄る。檀家さんや孫へのお土産として平家最中を購入。栗がひと粒入った「くりやかた」は前日までに予約をしておいた。要予約なのだ。
最中の皮も餡も自家製で保存料などが入っていない「平家最中」は絶品の名物。

店の前では若旦那さんが雪で像を作っていた。人の顔だ。聞くと、某アニメのキャラらしい。

美「あー、うん、人の顔に見えてきているよ!」

道ゆく人も車も、止まって見ていく。まだ未完成だが、先が楽しみな雪像だ。

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