東京下町の歴史を楽しんだり、浅草やグルメを堪能しながら観光名所を巡る東京下町の観光情報誌

[2014年4月 更新]

かつての本所区にあたるエリアの鰻屋を紹介

東京スカイツリー®を中心に北は向島、南は本所の先までの老舗鰻屋を紹介。いずれもしっかりと手仕事をしている名店ばかりだ。

※ここで表記されている価格は全て、2014年3月のものです。

かつての本所区にあたるエリアの鰻屋を紹介

18世紀ごろに生まれた
タレをつけて焼く鰻の蒲焼き

「蒲焼き」という名前の由来は諸説あり、はっきりとしていない。
鰻を縦に串に刺して焼いた形が多年草の植物「蒲(かば)」の穂に似ているから、または鰻を焼いた色が樺(かば)もしくは樺細工に似ていることから、または焼いたときの芳(かんば)しい香りの「かんば」が変化して・・・・・・などの説がある。

蒲焼きにする以前、鰻は江戸前寿司のネタのひとつでしかなかった。それどころか、「江戸前」という言葉自体が、鰻のことを指していた時代もあったのだ。もちろん、うな丼もうな重も存在していなかった。
うな丼がいつ、どのようにして生まれたのかというのも、諸説あり真相ははっきりしていないようだ。土用の丑の日に鰻を食べるという習慣を作ったのが平賀源内という説があるほどだ。
しかし、うな重の誕生はどうやら定説となっているものがあるらしい。意外と歴史は浅く、1960年(昭和35年)に東京の鰻屋がはじめたといわれている。そして徐々に高級な料理として広まっていくことになる。

その調理は難しく、「串打ち三年、裂き八年、焼きは一生」といわれている。
まず焼き(白焼き)、蒸し、さらにタレをつけて焼くという東京下町の鰻の名店を紹介していこう。

うな重、肝吸い、お新香というセットが定番

うな重、肝吸い、お新香というセットが定番

焼き、蒸し、焼きという工程は関東の調理法

焼き、蒸し、焼きという工程は関東の調理法

本当の鰻屋は活きた鰻がいる。注文が入ってから捌くのだ
タレをつけて何度も焼く。芳しい香りが漂う

明治40年創業
地元に根付く鰻屋の老舗

春日通りの本所三丁目の信号から南に下ったところにある「川勇」。
現在は3代目ご主人と4代目の息子さんが調理をしている。
ホームページにも1907年(明治40年)創業、とあるが、先代の2代目ご主人が生まれたのが1908年(明治41年)で、そのときにはすでに鰻屋を営んでいたことからそう謳っているだけ。実はもっと以前から代々鰻屋をやっていたようだ。
本所で店を構える以前は、東海道五十三次の宿場町「柏原」で旅人相手のうなぎ茶屋と旅籠を営んでいた。富士山の麓でとれた鰻を旅人に振る舞ううなぎ茶屋は、富士山が綺麗に見えることで東海道随一ともいわれる名所に数軒が軒を連ねていたといわれるほどの名物だったという。

その後、東京に店を構えるが、関東大震災と大戦でタレを失ってしまう。しかし、終戦後の1946年(昭和21年)に新たなタレを作り、継ぎ足しながら現在もその味を継承している。
「川勇」のタレは、それほど甘さや辛さの主張がない。店主によると、あえてそうしているという。幅広い層においしく食べてほしいという考えは、高齢の方に向けるということでもある。ご飯もやや柔らかめとなっている。

しかし一方で、先代から「鰻料理は活き魚料理」と教えられているため、できるだけ注文が入ってから鰻を裂き、焼いて出したいと考えている。
脂を落とし柔らかく仕上げるための“蒸す”工程は15分はかかるので、注文を受けてから約25分はかかるが、そこはこだわりだ。ただし、お客さんが多いピーク時はある程度捌いておくこともある。

昼は近隣の会社に勤める人や東京スカイツリー®観光に来た人などが来店することもあるが、昼夜ともに地元の人の来店が多い。
店主同様、何世代にもわたって店に通ってくれている家族も多い。親に連れられて来ていた小さかった子が結婚し、自分の子どもを連れてくることもよくあるという。子どものころから「川勇」の鰻を食べていたので、鰻といえばこの味と刷り込まれている人もたくさんいることだろう。

とても食べやすい「うな重 上」(2300円)

とても食べやすい「うな重 上」(2300円)

ゆずが入った肝吸いはすべてのうな重についてくる

ゆずが入った肝吸いはすべてのうな重についてくる

お新香と肝吸いはセット

お新香と肝吸いはセット

「川勇」
座敷席とテーブル席がある。ご飯、鰻、ご飯、鰻を重ねた「大名御膳」(4500円)に加え、さらにもう1段ご飯と鰻を重ねた「でぶやスペシャル 大名御膳」(6000円)もある

店舗データ

川勇

【川勇】
住所:東京都墨田区石原3-30-9
URL:http://homepage1.nifty.com/unagiya/index.html
TEL:03-3622-5592
営業時間:11:00~14:00 16:30~20:30(L.O.20:15)
定休日:水曜
●東武スカイツリーラインとうきょうスカイツリー駅より徒歩約20分

約70席の広い店舗に集まる
家族や団体の楽しそうな声

墨田区向島にある鰻屋「大和田」。
鰻屋の屋号には大和田が多いのだが、ここは本名も屋号も大和田。

大和田という鰻屋が多い理由を簡単に説明しよう。
江戸の町が活気をもち諸国の庶民が次々に江戸を目指していた時代、大阪府大和田の鰻採りがうまい漁師たちが稼ぎを求めて江戸へやって来て、川すじに集団で移住をしたという。その商いの流れから鰻屋の屋号に大和田が残っているわけだ。屋号の裏には実に300年以上の歴史があった。

「大和田」という鰻屋は多いが、ここはチェーン店ではない。社長によると店自体の歴史は、「90年くらい。100年はいっていないはず」とのこと。関東大震災で店がなくなってしまい、詳細な資料も失ってしまったという。
店を会社にしたのは1950年(昭和25年)。現在は3代目店主が社長だ。

「川勇」もそうだったように、鰻屋は注文してから25~30分経たないと料理が出てこないということを覚えておこう。逆にラーメン屋のように10分ほどで出てくる鰻屋には疑問を感じてもいいかもしれない。

「大和田」のタレはあっさりしていると言う人が多いという。みりん、醤油、砂糖で作られた甘くもなく辛くもなくというタイプだ。
輪島の本漆塗りのお重に入ったうな重は、ふっくらしているのだが口に入れるととろけるような柔らかさ。これは焼きたてでないと味わえないだろう。
鰹節が香る「きも吸い」(400円)はエノキタケが入っている。

約70席もある広い店内だが、それぞれ小スペースで仕切られているので、気兼ねせずに食事を楽しめる。

「うな重 松」(3200円)。肉厚でとろける柔らかさ

「うな重 松」(3200円)。肉厚でとろける柔らかさ

「きも吸い」(400円)

「きも吸い」(400円)

「大和田」の焼き手は3人いる

「大和田」の焼き手は3人いる

輪島の本漆塗りのお重
「大和田」
仕切りをはずせば団体にも対応

店舗データ

大和田

【大和田】
住所:東京都墨田区向島4-10-21
URL:http://www.d1.dion.ne.jp/~lkiyo/
TEL:03-3622-3301
営業時間:11:30~13:30 16:30~21:00
定休日:月曜(祝日の場合は翌日休)
●東武スカイツリーライン曳舟駅より徒歩約8分

東京スカイツリー®近くの人気店は
店主一代のこぢんまりした鰻屋

町の食堂のような佇まいの鰻屋「埼玉屋」は、創業が1966年(昭和41年)。店主が修行をした後、独立した店だ。ご夫婦で切り盛りしており、地元の人に愛されている店でもあるが、立地のよさとテレビで取り上げられたこと、そして何より店主の人柄で東京スカイツリー®観光に来た遠方からのお客さんが何度も通うほどの人気店となっている。
年季の入った店内を見ると、ゆったりくつろぎたくなるような緊張感のない雰囲気。
しかし、侮ってはいけない。ここも基本的には、注文が入ってから鰻を捌き、焼き・蒸し・焼きの工程を丁寧に行っていく。つまり混み具合によっては30分以上待つこともあるかもしれない。鰻を食べるということはそういうことなのだ。

それでも幅広い層に支持を得ているのが「埼玉屋」だ。
「この間食べたらとてもおいしかったからまた来たの」という高齢の女性客もいるし、ガッツリ食べそうな体格のいい男性客もいる。
そして、みな一様に満足そうにご馳走さまをしていくのだ。
前出の2店と違う点がもうひとつ。店が食堂か居酒屋のような造りなので、客席と厨房が離れていないのだ。カウンターのなかで調理している。それはつまり、鰻を捌く音も聞こえれば、タレをつけて焼く芳しい香りも漂ってくるというわけだ。この香りは店の外にも溢れ、香りにつられて、「今日は鰻を食べよう」と決める人もいるのではないだろうかと思う。

鰻が不漁のときでも苦労して量を減らさず、価格も据置きで頑張ってきた。
そんな見えない努力が、しっかりとお客さんを店に呼ぶことに繋がっているのだろう。

「うな重」(3200円)。やや辛めに作られたタレ

「うな重」(3200円)。やや辛めに作られたタレ

店主が焼くときに店内に響くうちわの音

店主が焼くときに店内に響くうちわの音

不漁でも大きさを揃えるために工夫する

不漁でも大きさを揃えるために工夫する

店主は「川勇」の先代とも付き合いがあった
うな重のセット。漬け物がちょっと辛かったが、これは日によって違うかも
「埼玉屋」

店舗データ

埼玉屋

【埼玉屋】
住所:東京都墨田区業平4-11-3
TEL:03-3625-3732
営業時間:11:00~20:00
定休日:水曜
●東武スカイツリーラインとうきょうスカイツリー駅より徒歩約5分

隅田川沿いの老舗の名店「鰻 駒形 前川」の鰻が
東京スカイツリータウン 東京ソラマチ®で食べられる

隅田川沿いの駒形に本店がある「鰻 駒形 前川」。創業は文化・文政期なので約200年という歴史がある老舗だ。
その「前川」が東京スカイツリー®の東京ソラマチ®7階に出店している。
鰻はもちろん本店と同様「板東太郎」という肉厚で脂が乗っているものを使用。脂の質や栄養面などを限りなく天然鰻に近づけることができたというブランドだ。

この東京ソラマチ®の6~7階にはほかにも老舗料理屋がたくさん出店している。
そのメリットとしてはいずれも敷居が低くなる点が挙げられる。老舗料理店の本店ともなると、慣れていない一見の客としてはやや躊躇してしまうこともあるのだが、東京ソラマチのなかにあることで、とても入りやすくなるのだ。
「前川」も例に漏れず、本店とは確実に客層が違っている。当然、観光客も圧倒的に増えているし、年齢層も低くなっている。女性のひとり客も多いという。

それでも提供されるのは本店と同じ鰻、タレ、手仕事だ。200年継ぎ足してきた醤油とみりんのみで作ったタレをつけた仕上げの焼きは、炭火を使ってじっくりと行う。「鰻 駒形 前川」は本店を含め3店舗あるが、炭火を使っているのはここだけ。
焼いている様子も外から見えるようになっている。
鰻はプリッとしていて、ふっくら柔らかい。ここへ来たら、今度は本店へ行って、ゆっくりとコース料理を食べてみてはいかが?

「うな重」(4095円)

「うな重」(4095円)

肉厚でフワフワな鰻「板東太郎」

肉厚でフワフワな鰻「板東太郎」

焼き場が外からガラス越しに見られる
蒸しも焼きも丁寧に返して上品な味が生まれる
200年の伝統を誇るタレ
焼き上がり。これを見たら食べたくなる
落ち着いた雰囲気の店内
「鰻 駒形 前川 東京スカイツリーソラマチ店」

店舗データ

鰻 駒形 前川

【鰻 駒形 前川】
住所:東京都墨田区押上1-1-2 東京スカイツリータウン東京ソラマチ7F
URL:http://www.unagi-maekawa.com/shop/skytree.html
TEL:03-5610-3099
営業時間:11:00~23:00(L.O.22:00)
定休日:不定休(東京ソラマチに準ずる)
●東武スカイツリーラインとうきょうスカイツリー駅より徒歩約8分

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