東京下町の歴史を楽しんだり、浅草やグルメを堪能しながら観光名所を巡る東京下町の観光情報誌

[2014年3月 更新]

墨田区の鐘ヶ淵、酎ハイ街道を行く

東武スカイツリーラインの鐘ヶ淵駅を出発して、酎ハイ街道に点在する居酒屋さんをハシゴ紹介。名店ばかりの町が羨ましくなるかも。

※ここで表記されている価格は全て、2014年3月までのものです。

墨田区の鐘ヶ淵、酎ハイ街道を行く

昭和20年代に生まれたという
焼酎ハイボールの故郷を行く

焼酎を炭酸で割り、梅エキスなどを入れたのが焼酎ハイボール。いわゆる酎ハイだ。銀座などではハイボールといえばウイスキーの炭酸割りだが、下町ではハイボールといえば焼酎がベース。そのあたりは「東京下町を知る」にも書いてあるので参照してほしい。

その酎ハイが生まれたのが墨田区ともいわれており、東武スカイツリーラインの鐘ヶ淵駅から東西に伸びる鐘ヶ淵通りは「酎ハイ街道」とも呼ばれ、世の呑助たちを夜な夜な酩酊させている。
かつては現在の数倍もの店が軒を連ねていたともいわれているが、再開発を重ね、店舗数もかなり減ってきている。
それでも元気に営業している店はまだまだあり、元気に酔っぱらっている常連たちとともに毎夜笑い声が溢れているのだ。

鐘ヶ淵通りを東に進み、水戸街道が見えてきたあたりの玉の井いろは通り近くにあるのは、「おかちゃん」。
店は30年以上になり、女将さんの相馬良子さんが切り盛りしている。ご主人は昼間は別の仕事をしていて、夜は店を手伝うという形。
カウンターと小上がりがあるのが酎ハイ街道のほとんどの店のスタイル。ひとりで来る常連客はカウンターに座って店主と話をしながら酔っていくのだ。
快活なママさんはどうやら本が好きらしく、話の合間に小説やおすすめの本のタイトルなどが出てくる。一見のお客さんとの話のきっかけにもなるからという。
酎ハイに合うおすすめの料理を聞くと、「ジャンボメンチ」(480円)と言われた。横にいた常連さんもすすめてくる。

「おかちゃん」

「おかちゃん」

「ジャンボメンチ」。ブリッと大きいメンチだが、レモンもジャンボ

「ジャンボメンチ」。ブリッと大きいメンチだが、レモンもジャンボ

店内にはいくつも花が飾られている。女性らしい気遣いだ

店内にはいくつも花が飾られている。女性らしい気遣いだ

昔話から猥談まで幅広い話で楽しめる
「うちは高級クラブだから」(笑)

きちんと手作りしているメンチカツはもちろん揚げたて。まずその大きさに驚く。「ジャンボ」の名前に偽りなしだ。
箸で割ってみると肉汁がジュワーッと流れ出した。口に入れてみると、揚げ物なのにそれほどコッテリとしたしつこさがないのも驚きだ。

息子さんも飲食系の仕事をしているらしく、「こんな料理があるよ」と教えてもらったものをママさんがアレンジしてメニューに載せているものもある。
そのひとつが「アボカドまぐろオリーブサラダ」(430円)だ。アボカドとまぐろの赤身を交互に並べ、タマネギのみじん切りを散らしてオリーブオイルで作ったドレッシングと黒胡椒をかけている。
「アボカドとまぐろが合うのよ」と言う通り、絶妙なマッチングだ。こちらも量は結構あるのに、ペロリと平らげてしまうはず。サッパリしているのだ。

女性だけのグループが座敷で飲んで食べて盛り上がることもあるという。
ママさんの人柄に常連客がついているともいえるだろう。
ちなみに店名の「おかちゃん」はママさんの旧姓「岡」からきている。

「ジャンボメンチ」を割ると肉汁が

「ジャンボメンチ」を割ると肉汁が

「おかちゃん」の酎ハイ

「おかちゃん」の酎ハイ

絶品の「アボカドまぐろオリーブサラダ」
相馬良子さん。明朗快活、加えて優しさも

店舗データ

おかちゃん

【おかちゃん】
住所:東京都墨田区東向島5-41-15
TEL:03-3619-2795
営業時間:17:30~24:00
定休日:木曜日
●東武スカイツリーライン鐘ヶ淵駅より徒歩約8分

これぞ下町の酎ハイ!!
そして手作り料理に脱帽

「おかちゃん」の隣にあるのが「亀屋」。
現在はママさんがひとりで切り盛りして、次男が会社から帰ると手伝うこともある。土曜は長男も手伝ってくれるらしい。
区画整理で2012年に改装をした店内は新しくて綺麗だが、店の歴史は1932年(昭和7年)からスタートしているというからビックリ。
もともとはママさんの叔父さんと叔母さんが営んでいたという。ママさんもご夫婦でお店をやっていたがご主人が数年前に他界。平日はお店にひとりなので、料理をするとカウンターに誰もいない状態になってしまうこともあるという。しかし、そこは常連さんがついている。「いま料理しているからちょっと待ってね」と言ってくれるのだ。
「野菜炒め」(350円)は注文が入ってから野菜を切るし、女性に人気があるという「すいとん」(400円)はできあいのものではなく、小麦粉を練って作っているという。どれも手間がかかっているのだ。
「にら卵」(350円)もしっかりと肉が入っていて、この価格とは思えないほど贅沢。そしておいしい。

酎ハイを頼むと、目の前でグラスに炭酸を注ぎ、そこにウイスキーのような黄金の酒を加える。瓶もウイスキーのものなので、「焼酎じゃないの!?」と思ってしまうが、これは焼酎に梅エキスを混ぜたもの。その割合は企業秘密らしい。その独自の焼酎が炭酸とともに冷蔵庫で冷やされている。なので氷は入れない。氷が溶けて味が変わってしまうのを避けているのだ。
ポチョンと入れたレモンが利いて、ついおかわりしてしまう。とても飲みやすいのだ。

「亀屋」

「亀屋」

「亀屋」の酎ハイ。これは一度は飲んだほうがいい。おすすめだ

「亀屋」の酎ハイ。これは一度は飲んだほうがいい。おすすめだ

酎ハイは目の前で作ってくれる
「にら卵」。価格と見合わなそうなくらいおいしい。肉入りだし
多くのお客さんが頼むという「マグロぶつ切り」(350円)
「亀屋」店内。会社帰りの優しい息子さんから「店、混んでる?」という電話が入った

店舗データ

亀屋

【亀屋】
住所:東京都墨田区東向島5-42-11
TEL:03-3612-9186
営業時間:17:30~23:00
定休日:日曜日・第2第4月曜日
●東武スカイツリーライン鐘ヶ淵駅より徒歩約8分

鐘ヶ淵駅すぐ近くにある赤ちょうちん
店主は「部長」と呼ばれる80歳代

鐘ヶ淵駅の東側すぐのところにあるのが「福松」。
16時くらいから暖簾を出して営業開始。仕事帰りで電車に乗る前に1杯、というお客さんがほとんどだという。
以前は会社務めをしていて、ここで店をはじめて20年というご主人は、会社員時代の役職から「部長」と呼ばれている。
オーダーが入ると「はいよー」と高い声で答える部長はなんと80歳を過ぎている。とてもそうは見えないのだが。

店頭や提灯に書かれているように、もつ焼きと煮込みがおすすめ。
「牛もつ煮込み」(400円)はとろけるようなモツが絶品。
串焼きであまり見かけない「しかめっつら」(200円)というのがあったので聞いてみると、豚のかしらだという。しかし、かしらはかしらで別にある。「カシラ」(100円)だ。どうやらかしらの固い部分らしい。それで「しかめっつら」か。あまりたくさんとれる部位ではないのだろう。
食べ比べてみると、確かに普通のかしらよりもかみ応えがある。でも固いというほどではない。
串焼きの肉はどれも大きくてボリュームたっぷり。それでも100円からというのが嬉しい。
チューハイは透明なタイプだが、しっかりと焼酎の味が濃い。
ホッピーセットや芋焼酎の「赤霧島」、そしてめずらしい日本酒も揃っている。
でも「まあみんなたいてい酎ハイだね」とのこと。

実はおおっぴらには言っていないが、この店、夜の営業のほかに朝4時からもオープンしている。なんと深夜勤務のタクシー運転手さんが仕事終わりに飲んで帰るために開けているらしい。時間帯がずれているので10時くらいまで運転手タイムだという。
部長さん、睡眠不足だろうに。優しいのだ。

「福松」

「福松」

「福松」のチューハイ。レモンも梅エキスも入っていないが、嬉しい濃さ

「福松」のチューハイ。レモンも梅エキスも入っていないが、嬉しい濃さ

右から「しかめっつら」(200円)、「カシラ」(100円)、「ナンコツ」(150円)。焼きとんだ。肉が大きくて嬉しい
「牛もつ煮込み」はトロットロに柔らかい
売りはもつ焼き
メニューがたくさん
「福松」店内
「福松」の部長

店舗データ

福松

【福松】
住所:東京都墨田区墨田5-44-9
TEL:03-3619-6202
営業時間:16:00~21:00(遅いときは22:00くらい)
定休日:日曜・祝日
●東武スカイツリーライン鐘ヶ淵駅より徒歩約1分

昭和6年創業、ご夫婦が営む
酎ハイ街道端っこの名店「はりや」

鐘ヶ淵通りを西へ歩き、墨堤通りと交差する手前の十字路で左を見ると、縄のれんの店で看板が光っている。実に佇まいのいい店だ。
「はりや」。
創業は1931年(昭和6年)という老舗。現在は2代目のご主人と奥さまで切り盛りしている。マスターは白髪でとても声がいい紳士。ほとんどの人が「マスター」と呼んでいるが、相当古い常連さんのみ「あんちゃん」と呼ぶ。
マスターがL字型カウンターのなかに入り、注文と会計とお酒作りを担当。奥さまがなかの厨房で料理を作っている。
小上がりもあるが、やはりひとり呑みの常連さんは当然カウンターだ。

「キャベツ炒め」(350円)を頼むと、マスターが念のため「焼きそばだよ。いいね」と言ってくれる。そう、「キャベツ炒め」は焼きそばなのだ。
壁に貼られているメニューは料理によって色が違う。新しい料理はまだ白いが、古くからあるものは茶色に変色しているのだ。「キャベツ炒め」はかなり茶色い部類だ。
以前食べたことがある「ピリ辛ハンペン」がなくなっているのでマスターに聞いてみると、「できるよ」と言う。常連がメニューがいつも同じだとつまらないと言うので、できる料理もあるけど、メニューを変えているのだという。
玉子と野菜をたっぷり使っていておいしかった「ポテトサラダ」はあるのかどうか聞いてみたら、「それは今日はできない」とのこと。確かに変化があっていい。

話の流れからマスターが愛用している辞書を見せてもらったら昭和27年初版、昭和37年改訂90刷のものだった。店よりは若いが・・・・・・。
「これで事足りるんだよ」と言うマスターはやはり格好いい。

「はりや」

「はりや」

「はりや」の酎ハイ。マスターが酎ハイディスペンサーで作ってくれる

「はりや」の酎ハイ。マスターが酎ハイディスペンサーで作ってくれる

「キャベツ炒め」。まごう事なき焼きそば
メニュー。それぞれの色の違いに注目
「ポテトサラダ」(300円)
「ピリ辛ハンペン」(300円)。明太子が挟んである
マスターの張谷さんと奥さん
「酒場」というのが潔い

店舗データ

はりや

【はりや】
住所:東京都墨田区墨田2-9-11
TEL:03-3612-9888
営業時間:17:30~24:00(L.O.23:30)
定休日:日曜・祝日
●東武スカイツリーライン鐘ヶ淵駅より徒歩約3分

酎ハイ街道の店は
まだまだ行ける

今回紹介できなかったが、いいお店はまだたくさんある。ざっと紹介しよう。

「はりや」方面から踏切を渡ってすぐに右折。住宅街のような路地を入っていくと「十一屋」がある。1937年(昭和12年)創業。L字型カウンターで、家庭料理が中心。料理の多さにも定評がある。地元の人にも愛されている店だ。
鐘ヶ淵通りに戻って東へ行くと、右手に「みつの」という赤ちょうちんがある。「おかちゃん」のママさんもおすすめしてくれた店だ。カラオケもある。
さらに進んで右にちょっと入ったところに「肴屋・愛知屋」がある。2012年(平成24年)に道路拡張工事で少し離れたところに移転した創業40年近くなる店だ。多くの人が通う人気店のひとつ。

「おかちゃん」「亀屋」の並びにあるのが「河内」。ここも女将さんひとりで切り盛りしている店なので、団体客には向かないかもしれない。
水戸街道まで出ると、2011年(平成23年)オープンという「みやちゃん」がある。もつ煮込みやぬか漬けが好評という。
そして水戸街道を渡った角にあるのが、これまた名店「丸好酒場本店」だ。60年以上の歴史があり、店内の雰囲気もよく、もつ煮込みはとてもおいしい。

上記紹介できなかった店のなかには、常連客が来られなくなるから取材拒否というところもある。常連を大切にしているのはすべての店に共通していることだ。
一見さんは酔っぱらいのマナーを守って来店しよう。

「みやちゃん」。女性でも入りやすそう

「みやちゃん」。女性でも入りやすそう

「みつの」。カラオケが聞こえてくることもある

「みつの」。カラオケが聞こえてくることもある

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釜飯

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