両毛の歴史を楽しんだり、グルメを堪能しながら観光名所を巡る両毛の観光情報誌

[2014年3月 更新]

酒造りと下野杜氏

水が豊富な両毛地域では、昔から多くの酒蔵が日本酒を造ってきた。そんな両毛の一翼を担う栃木県で、近年新しい動きが。

酒造りと下野杜氏

日本酒を造る人々

日本酒は米と麹を使って造るお酒である。こういってしまうとしごく簡単に思えるが、実は工程はとても複雑で、世界でも希な「並行複発酵」という過程を経て造られており、その作業は蔵元と杜氏に代表される専門家集団によって行われてきた。
蔵元と杜氏の違いを簡単に説明すると、酒造りを行う酒蔵の経営者が蔵元。そしてその下には蔵人と呼ばれる酒造り集団がおり、蔵人の責任者が杜氏と呼ばれる存在なのである。
杜氏をはじめとする蔵人は「越後杜氏」や「南部杜氏」と呼ばれるように、地域ごとに集団を形成していることが多い。元来、冬に酒を仕込む酒蔵の仕事は、農民たちに絶好の出稼ぎの場所であり、そのことから地域ごと集団がまとまってきたといわれている。
両毛の酒蔵も、もともとは越後杜氏とのつき合いが深かったようだが、近年、越後杜氏の高齢化や後継者の不在といった理由から、自社で杜氏を育成するいわゆる「社員杜氏」も増えつつある。

両毛エリアへは東武鉄道の特急りょうもうが便利

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「下野杜氏」の誕生

とくに両毛の一翼を担う栃木県では、この杜氏制度に関して大きな動きがあった。2006年に成立した「下野杜氏」の認定制度である。
これは、杜氏がいなくなることに危機感を抱いた県内の蔵元たちが、栃木県の酒を後世に伝えていきたいという思いから一致団結して創り出した制度だ。もちろん当初は越後杜氏や南部杜氏などを講師にして技術者養成講座を行い、それぞれの蔵が持っていた情報も惜しみなく交換した。さらに実技、筆記、利き酒、面接などを経てようやく下野杜氏として認定されるのだ。2013年までにすでに17人の下野杜氏が誕生しており、それぞれが切磋琢磨しながら栃木県らしい酒造りに励んでいるという。
2014年に入ってもうひとつニュースが。栃木県では「とちぎの地元の酒で乾杯を推進する条例」が施行された。これは県内で生産された酒の普及や地産地消の促進などを目指したもので、これまで京都などでは同様の条例が見られるが、東日本の都県では初めての制定になる。

日本酒作りには複雑かつ繊細な工程が必須だ(島岡酒造にて)

日本酒作りには複雑かつ繊細な工程が必須だ(島岡酒造にて)

下野杜氏制度によって栃木の酒は新時代を迎える(第一酒造にて)

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