両毛の歴史を楽しんだり、グルメを堪能しながら観光名所を巡る両毛の観光情報誌

[2014年8月 更新]

印度カリーセット、ソースかつ丼、旬のフルーツ

まだまだあります、桐生ならではローカルグルメの数々……。

「印度カリーセット」異国調菜・芭蕉

昭和初期から連綿と続く洋食の味と店構え

桐生の目抜き通りともいえる本町通り。そこから一本西に並行している細い路地が糸屋通りだ。その名が示すように、織物業が盛んだった時代には多くの繊維関連の問屋が並んでいた通りである。この通りの中ほどにあるのが「異国調菜・芭蕉」。樹木に囲まれた古民家を店舗として使用しており、その外観はひときわ異彩を放っている。
店内に入っても驚きは続く。初代店主が自ら設計したという店内は、和風でありながらどこかエキゾチックさも感じさせ、またあちこちに並べられた膨大な骨董や民芸品が、この店に「どこでもない」異国情調を醸し出している。
創業は1937年(昭和12年)。カレーやグラタン、オムライスなど、当時としてはかなりハイカラだったであろう洋食を出し続け、そのメニューはもちろん、レシピにいたるまで今日もそのまま提供し続けている。
古くは、坂口安吾をはじめとする数々の文人が足繁くこの店に通い、また織物業の街だけにファッション産業の重鎮の来店も多く、過去には山本寛斎や三宅一生、石津謙介なども訪れたという。
ちなみに店内に入ってすぐ右手にある壁には、棟方志功の手による馬と天女をモチーフとした見事な壁画が描かれているのだが、この壁画にはちょっとしたエピソードがある。棟方志功が一気呵成に書き上げたこの壁画に対し、初代店主は「店の雰囲気に合わない」とばかりに一夜にして漆喰で埋めてしまったというのだ。裸で舞う天女たちの姿が、当時としては斬新すぎると感じたのかもしれない。
その壁画が、再び日の目を見ることになったのが2008年(平成20年)のこと。壁の下に壁画が眠っていることすら知る人が少なくなったおり、そろそろよかろうと慎重な発掘作業を行ったところ、そこには見事な壁画が現れたのであった。
そんな歴史の立会人のようなお店でいただいたのは、ランチメニューとして出されている「印度カリーセット」。もちろんこれも創業当時のレシピそのままの一皿だ。さまざまなスパイスの香りが一体となるなか、細かく刻まれた野菜の食感が楽しい。辛さもほどほどなので、辛いものが苦手な人でも大丈夫だろう。一緒に出されるマッシュされていないポテトサラダも、なんだか歴史を感じさせてくれる。数々の著名人もこの味を楽しんだのかと思うと、建物同様このカレーにも、ずっしりとした歴史の重みを感じるのだった。

糸屋通りのなかでもひときわ目立つ「芭蕉」の外観

糸屋通りのなかでもひときわ目立つ「芭蕉」の外観

凝った意匠が施された門構え

凝った意匠が施された門構え

静かな時間が流れる店内。店自体がひとつの貴重な骨董のよう
これが漆喰の下から現れた、棟方志功による見事な壁画
ランチタイムに出される「印度カリーセット」。コーヒーまたは紅茶がつく
店内にはさまざまな骨董や民芸品が飾られている

店舗データ

異国調菜・芭蕉

【異国調菜・芭蕉】
住所:群馬県桐生市本町5-345
TEL:0277-22-3237
営業時間:11:30~20:30
定休日:火曜日、第2または第3水曜日
●東武桐生線新桐生駅より市営「おりひめバス」にて約20分、本町五丁目下車、徒歩約3分。またはタクシーで約10分

「ソースかつ丼」藤屋食堂

肉はもちろん、パン粉、ソースにもこだわりが光る

東武桐生線新桐生駅を出て渡良瀬川を渡り、厚生総合病院の横を抜けた先の交差点に面しているのが藤屋食堂だ。途中一度の引越しを経つつも、桐生に店を開いて47年。ご主人は中学を出るとすぐに、桐生にあるもう一軒のソースかつ丼の老舗・志多美屋に修行に入り、24歳で独立してこの店を開いたそうだ。
メニューには焼き魚やカレーライスなど、いかにも食堂然とした食事も並ぶが、ここに来たからにはやはりソースかつ丼を食べるべきだろう。そう思ってソースかつ丼の欄に目を通すと、ソースかつ丼だけでも肉の部位によってロース、ヒレ、モモと3種類あることが判明。ここはこのお店の一番のスタンダードであるという豚モモ肉のソースかつ丼をいただくことにした。
やがて現れたソースかつ丼は、両毛地方特有の、揚げたてのかつをソースに一度くぐらせてからご飯の上に載せるスタイル。4つ盛られたかつをひとつ箸でつまみ、まずは口に入れてみる。ソースがしっかりしみた衣がサクッとほぐれて、肉の旨味が口いっぱいに広がる。ソースがしみているのに、衣は少しもへたらずにカリカリ感でいっぱいだ。
聞けばこの食感を出すために、パン粉はソフトとハードという2種類をブレンドして使っているとのこと。また、肉の種類によって揚げ時間が異なるため、肉ごとにもパン粉のブレンドを変えているのだそうだ。
ソースは足利のソース会社から、市販されていないオリジナルのソースを仕入れ、そこにしょう油やみりん、砂糖などを配合して独自のソースに仕上げている。そうか、それでこのソースはかつはもちろん、ごはんにも合うのか。
「だけど、それだけじゃこういうソースにはならないんだよ。毎日毎日、このソースに揚げたてのかつをくぐらせているでしょ。それを40年以上続けていることがこの味の本当の秘密なんだよ」と、ご主人はそっと教えてくれた。なるほど、鰻の蒲焼きや焼き鳥のタレに通じるものがこのソースにもあったのか。
もちろん肝心のお肉のほうも、モモ肉は脂肪分が少ないうえにきめ細かな肉質なのでさっぱりして美味。いくらでも食べられてしまいそうだ。
最後に「あと3年でこの店も50年。よくここまで続けてきたものだよ」と、うれしそうにつぶやくご主人の顔が印象的だった。

藤屋食堂の店構え。正面に立つのはご主人の看板。

藤屋食堂の店構え。正面に立つのはご主人の看板。

日差しがよく入り明るい店内

日差しがよく入り明るい店内

「ソースかつ丼一筋」という暖簾の染め抜きが頼もしい

「ソースかつ丼一筋」という暖簾の染め抜きが頼もしい

これが定番「ソースかつ丼」830円
ソースがしみてなおサックサクのかつ

店舗データ

藤屋食堂

【藤屋食堂】
住所:群馬県桐生市清瀬町5-49
TEL:0277-45-1805
営業時間:11:00~14:30、17:00~20:15
定休日:月曜日、第2火曜日
●東武桐生線新桐生駅より市営の「おりひめバス」で約15分、厚生病院下車徒歩約2分。または新桐生駅より徒歩約30分

果樹農場「ガーデンタナカヤ」でフルーツ三昧

ブルーベリー、ブドウ、カキ……旬のフルーツを味わう

「ガーデンタナカヤ」は、東武桐生線赤城駅からタクシーで約10分ほどのところにある果樹園だ。それまで椎茸栽培をしていたご主人が心機一転、1997年から果樹の栽培を開始。少しずつ生産品目が増えるにつれて、それまで別の仕事をしていた奥さんや東京で働いていた息子さん、娘さんも果樹園の仕事に携わるようになり、今では家族全員で果樹の手入れに勤しんでいるとのこと。もちろん農業ならではの苦労は絶えないのだろうが、はたから見ているとなんだかとてもうらやましく思えてしまう環境だ。
主な生産品目はブルーベリー、ブドウ、そしてカキ。シーズンを口火を切るのは、6月下旬から収獲が始まるブルーベリーだ。現在は群馬県育成の「おおつぶ星」をはじめ、計9種のブルーベリーを栽培中とのこと。ブルーベリーに関しては、予約をすればブルーベリー狩りを楽しむことも可能。8月に入ってブルーベリーの季節が終わると、それに代わって収穫が始まるのが、こちらの果樹園が最も力を注いでいるブドウだ。現在なんと40種類以上の品種を栽培しているというから驚きだ。こちらではブドウにかぎらず、「新しい、珍しい、美味しい」をモットーに栽培品種選びに取り組んでいるそうで、最近では「瀬戸ジャイアント」や「シャインマスカット」といった稀少品種も栽培中とのこと。
もちろん新しい品種に挑戦するにはリスクもあり、土地に合わずにうまくいかないこともあるそうなのだが、それでも一度特定の品種を買ってくれたお客さんが、その品種名を憶えてリピーターになってくれることもあり、そんなときは生産者冥利に尽きると語ってくれた。
秋も深まりブドウがシーズンを終えると、ラストを飾るのがカキ。こちらのカキは、樹上脱渋と呼ばれる特殊な方法でカキの渋みを抜いており、この方法は手間はかかるものの、そのぶん新鮮でジューシーなカキを収穫できるのだそうだ。
カキの収穫を終えるとさすがに果樹の季節は終わりを迎えるが、その後も手作りの干しブドウや干し柿を販売しており、2月いっぱいまではフルーツの余韻を楽しむことができる。
シーズン中は、どのフルーツも入口にある直売店で購入可能。ただし種類によっては1週間ほどで旬が終わってしまうものもあるので、具体的にほしい品種がある場合はあらかじめ確認してから訪ねるのがお勧めだ。

「ガーデンタナカヤ」の直売店。大きなケヤキが目印この裏手に果樹園が広がる

「ガーデンタナカヤ」の直売店。大きなケヤキが目印この裏手に果樹園が広がる

たわわに実った大きなブルーベリー

たわわに実った大きなブルーベリー

なかにはこんな形をした珍しい品種も
ここでは現在40種類以上のブドウが育てられている
ブルーベリーの収穫期にはブルーベリー狩りもできる
この日はブドウへ袋かけ作業の真っ最中だった

店舗データ

ガーデンタナカヤ

【ガーデンタナカヤ】
住所:群馬県桐生市新里町新川1162
TEL:0277-74-1478
営業時間:9:00~19:00
定休日:シーズン中は無休、シーズンオフの3~5月は休み
●東武桐生線赤城駅より上毛電鉄に乗り継ぎ新川駅下車、徒歩約5分。または赤城駅よりタクシー約10分