両毛の歴史を楽しんだり、グルメを堪能しながら観光名所を巡る両毛の観光情報誌

[2014年3月 更新]

両毛地域の酒蔵

太田、足利、佐野……。両毛の街にある酒蔵を訪ねてみた。

※ここで表記されている価格は全て、2014年3月までのものです。

第一酒造(佐野市)

周囲を田んぼに囲まれて、米から酒を造る蔵元

東武佐野線佐野市駅から南西に約1.5キロ。徒歩で約30分ほど。周囲を田んぼに囲まれたなかに第一酒造はある。創業1673年(延宝元年)。これは徳川四代将軍家綱の時代であり、栃木県で最も歴史のある酒蔵だ。
現在の蔵元は十二代目とのこと。造られているお酒の銘柄は「開華」。命名当初は、文明開化の時代背景から「開化」と名づけられていたものが、戦後に現在の「開華」となった。
こちらの酒蔵の特徴は、創業時から農業と並行しながら酒造りを始め、それを現在も続けていること。来る途中に広がっていた田んぼも第一酒造の所有で、そこでは酒造り用の米も作られているのだそうだ。
また全国の酒蔵で唯一、食料検査技師の資格を持ち、自社のお米はもちろん、近隣で収獲されたものも等級検査を行っているという。
仕込みに用いる水はもちろん佐野の水。佐野は銘水の地としても知られ、市街地から6キロほど北西にある弁天池は環境省指定の日本名水百選にも選ばれている。
地元で収獲されたお米と地元の水で造られるお酒の味はというと、華やかな香りと柔らかな味わいが引き立つ淡麗旨口。いわゆる濃醇系ではないので、あっさりしたものと一緒にいただくのがお勧めだ。地元の食べ物では、佐野の名水豆腐や湯葉などと相性がよいらしい。
こちらのお酒の消費地はその8割弱が地元。そこには、県外や海外で飲まれるのももちろんよいけれど、まずは地元でしっかり飲まれてほしいという、蔵元の深い地元愛が反映されている。
夏には蔵の中庭で冷酒と夏野菜を楽しむ夕べ「ひやガーデン」を、秋には江戸期に建てられた母屋の奥座敷で日本酒を楽しむ「酒蔵茶屋」などを開催し、好評を得ている。これは少しでも日本酒を知ってもらいたいという願いとともに、実際に飲んでくれている人々の表情を見たいという気持ちが込められているそうだ。
また蔵の一部をギャラリーホールに改装、「酒蔵楽(さかぐら)」の名のもとに酒造りの資料展示やミニコンサートなども行われている。

田んぼに囲まれたなかにある第一酒造

田んぼに囲まれたなかにある第一酒造

母屋は江戸期に建てられたものだそう

母屋は江戸期に建てられたものだそう

タンクのなかで静かに熟成していく酒

タンクのなかで静かに熟成していく酒

ふつふつと泡立ちながら発酵を続ける酵母

ふつふつと泡立ちながら発酵を続ける酵母

店舗には季節限定のさまざまなお酒が並ぶ
こちらは冬から春限定の「開花宣言」

店舗データ

第一酒造

【第一酒造】
住所:栃木県佐野市田島町488
TEL:0283-22-0001
営業時間:小売9:00~17:00
定休日:正月
一般の蔵見学:要予約
●東武佐野線佐野市駅より徒歩約30分。タクシーで約5分

島岡酒造(太田市)

昔ながらの規模でこだわりの酒を造り続ける

島岡酒造は、東武線太田駅から西へ4キロほど行ったところにある酒蔵だ。入口には新酒のできあがりを意味する杉玉が提げられ、磨かれたガラスのウインドウには、今年最初の新酒となる「初しぼり」が並べられていた。
島岡酒造がこの地に創業したのは1863年(文久3年)のこと。現在のご主人は5代目にあたるそうだ。
造っているお酒の銘柄は「群馬泉」。やや辛口のなかにも米の味は残す、しっかりとした骨太の味わいだ。そのため、一緒に食べる料理も、強い味のものとの相性がよいそうで、煮物や鍋物はもちろん、中華料理やイタリア料理とも合うそうだ。
意外なところでは、両毛地区でよく食べられるモツ煮込みや焼き鳥(タレ)との相性も抜群とのこと。やはり、同じ土地で育ったお酒と料理というのはよい関係を築けるのだろう。ちなみに仕込みに用いている酒造米も群馬県産の若水という品種が主で、これに井戸から汲みあげる赤城水系の豊富な水で仕込んでいる。まさに両毛の地酒といえる。
飲みかたはお燗がお勧めとのこと。温かくすることで、このお酒が持つ力強さと風味が一層増すのだそうだ。
こちらの酒蔵が造っているお酒の量は1年におよそ400石。1石は100升に相当するので、つまりは1升ビンにして40000本ということになる。これは規模としては小さいらしい。しかしもともとお酒というのは運搬が困難で、そのために過去にはこの規模の酒蔵が街ごとに存在していたそうで、島岡酒造も当時からの規模で踏襲している。もちろん、規模を大きくすることも可能なのだが、「このくらいの量が、造り手としては一番おもしろいんです」と語る蔵元。
春を迎え、今年の仕込みをほぼ終えた蔵は静けさに包まれていたが、そんななかレンガ積みの見事な煙突が青空に映える。聞くと、この煙突に使われているレンガは、明治時代に渋沢栄一が興した日本煉瓦製造によるもので、つまりは東京駅の駅舎に使われているものと同じなのだそうだ。この貫禄も納得である。
「舌だけで味わうのではなく、胃腸がしみじみ『旨いなー』といってくれるような酒を造り続けたいんです」という蔵元のことばが印象に残る島岡酒造だった。

「群馬泉醸造元」の看板が歴史を感じさせる入口

「群馬泉醸造元」の看板が歴史を感じさせる入口

群馬泉には「山廃本醸造」「超特選純米」「山廃もと純米」などさまざまなラインナップがある

群馬泉には「山廃本醸造」「超特選純米」「山廃もと純米」などさまざまなラインナップがある

蔵のなかには整然とタンクが並ぶ

蔵のなかには整然とタンクが並ぶ

酒母をつくるための部屋。入口の上には注連縄が
レンガ造りの煙突が歴史を感じさせる

店舗データ

島岡酒造

【島岡酒造】
住所:群馬県太田市由良町375-2
TEL:0276-31-2432
営業時間:小売9:00~17:00
定休日:土曜日午後、日曜日
一般の酒蔵見学:なし
●東武伊勢崎線太田駅よりタクシーで約10分

今井酒造店(太田市)

市の景観賞を受賞した蔵のカフェで、酒に思いを

東武桐生線で太田駅からひとつめ。三枚橋駅から約5分ほど歩いたところにあるのが今井酒造だ。創業は1866年(慶応2年)。新潟から蔵人として訪れた初代が、そのままこの地に酒蔵を創業したらしい。現在のご主人は六代目。いずこもそうだが、酒蔵というのはどこも長い歴史を持っているものである。
造っているお酒は、純米酒「上州風まかせ」を主な銘柄として、「不二神龍」「雷雲」などを手がけている。訪れた2月には「むつらぼし」が店頭に並べられていた。ちなみに「むつらぼし」というのは星のスバルのことで、冬の季語なのだそうだ。
こちらのお酒の特徴はと質問すると、すぐに返ってきたのは「さわりのない酒」という答え。あまり聞き慣れないことばだったので、もう少しくわしく尋ねてみると、「口に含んだときにカドがなく、それでいて旨味が口いっぱいに広がっていく、そんなお酒を目指しています」とのことで、いわゆる「淡麗」とか「濃醇」いったくくりには収まらない味を探求し続けているのだそうだ。
「風まかせ」の飲みかたは冷やからお燗までオールマイティー。今年のは例年より少し辛めに仕上がっているので、熱燗もいいらしい。ちなみにこのお酒に合う食事は、和食の野菜系。漬け物やスティックサラダ、こんにゃく、豆腐などもお勧めとのこと。これには、単に酒と合うというだけでなく、もともと純米酒はカロリーが高めなので、こういった低カロリーな食事と一緒に飲むことで健康面での合理性もあるらしい。
お店の奥には、広い敷地に酒蔵が建っており、現在その一部はイベントスペースとしても活用されている。この酒蔵を中心とした建物は、2013年には太田市の景観賞の大賞を受賞したほどの見応えのあるものだ。
また店舗には「喫茶サロンかぜくら」も併設している。こちらでは純米酒ケーキや味噌シフォンケーキといったスイーツに加えて、玄米甘酒など、いかにも蔵元のカフェといったメニューを楽しめる。各種イベントも行われており、おうかがいしたときは、天然藍染めの展示・販売会も行われていた。
酒蔵を後にして外に出ると、和泉酒造店のお酒「風まかせ」の命名理由のひとつにもなっている、この地方独特のからっ風が吹いていた。

店舗の入口。喫茶サロン「かぜくら」が併設されている

店舗の入口。喫茶サロン「かぜくら」が併設されている

太田市の景観賞大賞を受賞した蔵の建物

太田市の景観賞大賞を受賞した蔵の建物

こちらが純米酒「上州風まかせ」

こちらが純米酒「上州風まかせ」

喫茶サロン「かぜくら」。壁には以前使われていた樽の蓋が掛かる
純米酒ケーキや味噌シフォンケーキなど構成的なスイーツが並ぶ

店舗データ

今井酒造店

【今井酒造店】
住所:群馬県太田市鳥山中町746-2
TEL:0276-22-2680
営業時間:小売9:00~18:00、カフェ11:00~19:00
定休日:月曜日、第3火曜日
一般の蔵見学:なし
●東武桐生線三枚橋駅より徒歩約5分

和泉酒造店(足利市)

お酒はもちろん、奈良漬けも大人気

足利市駅から歩くこと約20分。年輪を感じさせる黒い板壁と白い酒蔵を擁しているの建物が和泉酒造店だ。迎えてくれたご主人は、歩いてきたと聞くととても驚き、その後に「都会の人はよく歩くからね、田舎の人はすぐに車を使っちゃって」と照れくさそうに話してくれた。
こちらの蔵元は200年近い歴史をもっており、ご主人はその七代目とのこと。170年ほど前にここに移られたとのことだが、とするとこの重厚な建物もそれだけ年季を積んでいるということか。ちなみに庭先に植えられている牡丹は明治維新のときに植えられたもの、入口にそびえる松にいたっては250年の歳月を経ているものらしい。
造られているお酒は普通酒の「泉川」、本醸造の「尊氏」、そして吟醸酒「尊氏」の3種類だ。尊氏、そうこの地ゆかりの武将「足利尊氏」の名前を銘柄に冠している。造られているお酒の味について質問すると、「いやあ、お酒は飲んだ人がそれぞれ自由に味わえばいいので、あまり『うちのはこういう酒だ』とはいわないようにしているんですよ」となんとも謙虚。
しかたがないので? 本醸造「尊氏」を味見させていただくと、辛口ながらもあまりそれを強調させない、のど元すっきりのお酒でした。
そしてこちらの蔵元には、お酒を並んでもうひとつ人気商品があり、それが奈良漬け。こちらはおかみさんが担当で、「尊氏」の酒粕を用いて昔からの製法で3カ月ほど漬け込んで完成させるという。わざわざこれを求めるために足利の地を訪れる人もいるそうだ。
こちらもひとつポリッとかじってみると、酒粕の濃醇な香りが口のなかに広がり美味。それほど塩分が強いわけではないのに、無性に白いご飯が食べたくなった。「ときどき、ぬか漬けみたいに食べる前に洗っちゃう人がいるんだけど、奈良漬けは洗わないで食べてね!」と、元気に教えてくれるおかみさんであった。
こちらのお酒と奈良漬け、遠方からの注文も受けているが、その際は電話にて直接ご注文くださいとのことだった。

歴史を感じさせる母屋と蔵

歴史を感じさせる母屋と蔵

手がけるお酒は「尊氏」と「泉川」

手がけるお酒は「尊氏」と「泉川」

軒下には趣のある古い看板が掲げられていた

軒下には趣のある古い看板が掲げられていた

和泉酒造店のもうひとつの人気商品がこの奈良漬け
奈良漬けは「いくらでもご飯が食べられる」と評判だ

店舗データ

和泉酒造店

【和泉酒造店】
住所:栃木県足利市助戸3-395
TEL:0284-41-2789
営業時間:9:00~18:00
定休日:不定休
一般の蔵見学:なし
●東武伊勢崎線足利市駅より徒歩約20分