両毛の歴史を楽しんだり、グルメを堪能しながら観光名所を巡る両毛の観光情報誌

[2014年3月 更新]

ココ・ファーム・ワイナリーでワイン三昧

足利の地でブドウから育ててワインを醸造するココ・ファーム・ワイナリー。その魅力と出会うために、農園まで足を運んでみた

※ここで表記されている価格は全て、2014年3月までのものです。

ココ・ファーム・ワイナリーでワイン三昧

ココ・ファーム・ワイナリーの歴史

東武伊勢崎線足利市駅からタクシーで約15分ほど。車窓の先に見える山並みに、広く開墾されている一角が目に入る。そこがココ・ファーム・ワイナリーだった。1958年、地元の中学校の特殊学級「こころみ学園」に在籍する子どもたちが中心になって開墾を行なったのが、このワイナリーの礎だ。
といっても、当初からここでワインを造ろうと思っていたわけではなかったらしい。日頃、学園の子どもたちはどうしても室内に閉じこもりがちで、なんとか体力や集中力を養ってもらおうという気持ちから開墾作業は始まったのだった。
開墾の土地となったのは、平均斜度38度というまるで崖のような杉林だった。杉を伐採して搬出し終えるだけ最初の2年は費やされ、ようやく最初に植えた作物がブドウ。苦労した農作業のご褒美としては甘い甘い果物がよかろうと選ばれた。当時、ブドウはまだそれほどたくさん出回る果物ではなく、こころみ学園で穫れたブドウは周囲からの評判もよかったという。しかし、高度経済成長のなか、次第に食用の高級ブドウを生産する農家も増え、相対的にその価値は低下してしまう。そこで、高級果実店に並ぶ形のよい葡萄はできないけれど、糖度や酸など中身のしっかりしたブドウでワイン造りを考えたのだった。
もちろん、当初から万事順調というわけにはいかなかった。特に社会福祉法人がワイナリーを経営するという点が、法的にもかなり難航したのだが、子どもたちの父兄の出資もあって、昭和55年、ついに有限会社を設立。ココ・ファーム・ワイナリーの誕生である。

時代遅れの手仕事が、いつの間にか時代の最先端に

ココ・ファーム・ワイナリーでは、極力農薬は使用せず、そして農作業もすべて手仕事で行うのが信条だ。畑の斜面が急すぎて機械を入れられないということもあるが、それ以前に、ココ・ファーム・ワイナリーは学園の子どもたちの作業場として存在しているわけだから、それを妨げることになってしまったら本末転倒なのだ。
そして、それがワイナリーに思わぬ副産物をもたらした。現在、ここの畑にはほとんど捨てるものがないのだという。落ちた葉はそのまま腐葉土となり、畑に養分を与えてくれる。皮や種といった、本来のワイン造りでは廃棄物となってしまうものも、きわめて低農薬であるがゆえに、家畜の飼料として使ってもらえる。ご存じのとおり、ブドウの皮は高ポリフェノールなので、家畜たちの免疫力を高めてくれるのだそうだ。
剪定で切られた枝までも、都心でワインを供するレストラン用のインテリアとして引き取られていくというのだから驚きだ。まさにこれは近年注目されている、循環型・持続可能な農業のありかたではないか。
「ずっと時代遅れの方法でブドウを育てていたら、いつの間にか自然に寄り添うようなワイン造りになっていたんですよ。やっていることはなにひとつ変わっていないのにね」
僕を案内してくれたワイナリーの女性が、照れくさそうに、そしてちょっぴり誇らしげに語ってくれた。

ブドウ畑の手入れはすべて手作業で行う

ブドウ畑の手入れはすべて手作業で行う

剪定されたブドウの枝さえも、ここでは再利用される

剪定されたブドウの枝さえも、ここでは再利用される

葉の落ちた冬のブドウ畑でも農作業を行われていた

葉の落ちた冬のブドウ畑でも農作業は行われていた

ワイナリーでの作業

さて、ワイナリーを見学させていただく。訪問した季節は2月。真冬は農作業もお休みとばかり思っていたら、葉のない畑で何人もの人が作業をしている。聞いてみると、ブドウの樹皮をはがしているらしい。なんでも、皮をつけたままにしておくと、皮の下に虫が入り込んでしまい生育に悪影響を及ぼすのだとか。しかし、これをすべてのブドウの樹に施すのかと思うと、いやはや気が遠くなるような作業である。
次に見学したのは醸造工場。ここには清潔感あふれるステンレスのタンクが何本も並んでいる。実はこのなかには、すでにワインができあがっており、いつでもビンに詰められるべく待機中であった。それがこの冬の大雪のおかげで、ビン屋さんから届くはずのビンの到着が遅れてしまっているとのこと。早くビンが届きますように。
続いて案内されたのはカーヴ(貯蔵庫)。山腹に穴を穿って造られたここは、年間を通して温度湿度が安定しており、スパークリング・ワインなどを熟成させるのには最適なのだそうだ。
その後、樽の洗浄過程などを見せていただき、最後に向かったのがブドウ畑の頂上にある風光明媚な丘だ。細くて急な九十九折りの道を歩いて登ること約15分。ちょっとした登山コースだ。
丘の上からの風景はまさに絶景だった。ワイナリー全体が俯瞰できるのはもちろん、谷の向こうに広がる足利の街も一望できる。残念ながらこの日は春霞がかかっていたので叶わなかったが、空気が澄んでいる日なら富士山もよく見えるらしい。

ワインがつまった醸造工場のステンレス製タンク

ワインがつまった醸造工場のステンレス製タンク

山肌に穴を開けて作られたカーヴ。年間を通して気温は一定だ

山肌に穴を開けて作られたカーヴ。年間を通して気温は一定だ

ブドウ畑の上から眺める風景。ここでワインを飲んだらさぞ美味しいことだろう

ブドウ畑の上から眺める風景。ここでワインを飲んだらさぞ美味しいことだろう

ワインの試飲

眼を楽しませたら、いよいよ次は鼻と舌を楽しませよう。お待ちかねの試飲である。こうしてワイナリーの歴史やワインの製造工程を見学したうえで飲むワインの味はまた格別だ。
併設のショップにあるカウンターでは、その日おすすめの5種類のワインを試飲できるテイスティングセットが用意されているので、ぜひチャレンジしてみたい。ちなみにこのセット、国際基準のワイングラスを使用しながら、500円で楽しめるという良心価格。
また、ココ・ファーム・ワイナリーのワインには、「足利呱呱和飲(あしかがココワイン)」「のぼっこ」「農民ロッソ」など、ユニークな名前を持ったものが多い。これはいたずらに欧風の名前をつけるのではなく、誰にでもすぐに憶えてもらえるようにという願いが込められたもので、その命名は毎年みんなでアイデアを出し合って決めるのだそうだ。
ちなみに、ココ・ファーム・ワイナリーのワインは2000年に九州・沖縄サミットで晩餐会に、2008年には洞爺湖サミットの総理夫人主催の晩餐会にも供され、このことがここのワインを一気に世に知らしめることとなった。

5種類のワインを味見できるテイスティングセット

5種類のワインを味見できるテイスティングセット

テイスティングして気に入ったワインは、ショップで購入できる

テイスティングして気に入ったワインは、ショップで購入できる

ワイン以外にも干しブドウやレーズンサンドなど、魅力的な商品が並ぶ
ユニークな名前がつけられたココ・ファーム・ワイナリーのワインたち

秋の収獲祭

毎年、11月の第3日曜日とその前日の土曜日前後には収獲祭が催される。1984年から始まり間もなく31回を迎えるこのイベント、日頃は静かな時間が流れるココ・ファーム・ワイナリーの丘も、このときばかりは押し寄せる大勢の人で大変な賑わいを見せるそうだ。もちろん通常の日でも、併設されているカフェ・レストランでワインや料理を楽しむことは可能。
そして、ワインを満喫するこんな旅の移動手段には、やはり電車がうってつけだろう。もちろん、ココ・ファーム・ワイナリーにはワイン以外にもブドウジュースやスイーツなどもたくさん揃っているので、お酒が飲めない人も十分楽しい時間を過ごせるはずだ。

カフェではワインはもちろん、さまざまな料理も堪能できる

カフェではワインはもちろん、さまざまな料理も堪能できる

料理とワインがお互いの魅力を引き立て合うメニューを満喫できる
天気のよい日は眼前のブドウ畑を眺めながら、テラスでの食事も可能だ

店舗データ

ココ・ファーム・ワイナリー

【ココ・ファーム・ワイナリー】
住所:栃木県足利市田島町611
TEL:0284-42-1194
営業時間:ショップ10:00~18:00、カフェ11:00~17:30(ラストオーダー)
定休日:収獲祭前日、年末年始、1月第3月曜~金曜日の5日間
ワイナリー見学:あり。10:30、13:00、15:00の3回。500円。10名以上は事前に連絡を
●東武伊勢崎線足利市駅よりタクシーで約15分

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