日光の歴史を楽しんだり、温泉やグルメを堪能しながら観光名所を巡る日光の観光情報誌

[2013年12月 更新]

湯西川温泉の郷土料理、囲炉裏料理

隠れ住んだ平家の時代から伝わり、アレンジや新しい料理を加えて現代に伝えられるようになったのが、囲炉裏料理。炭火で食材を焼き、炉を囲みながら楽しく食べる絶品料理を紹介。

平家落人伝説が残る
湯西川温泉の囲炉裏料理

東武スカイツリーラインから鬼怒川線を経て、野岩鉄道の湯西川温泉駅で下車。そこからバスに乗り約25分で到着するのが湯西川温泉郷だ。

栃木県日光市の日光国立公園内にある、湯西川の渓谷に面した温泉街。
この地はかつて壇ノ浦の戦いに敗れた平家の落人が逃げのびた場所として知られている。現在は豊富な湯量を誇る源泉とこの地ならではの料理が楽しめる観光地として多くの人が訪れている。

この地ならではの料理というのが、囲炉裏で食材を焼いて食べる囲炉裏料理だ。
もともとは平家落人が湯西川の河原で狩りをして得た鹿や熊などの肉を石焼きにして食していたことからはじまっているともいわれている。
焼いた石に味噌で土手を作っていたという話もある。
それらが現代では囲炉裏を囲んで食べる名物料理に昇華されたというわけだ。

湯西川温泉郷の多くの宿で、この囲炉裏料理が食べられるのだ。
囲炉裏で焼いて食べるものに加え、地産の食材を使った会席風の料理も同時に楽しめる。

創業1666年の「本家伴久」。
住所:栃木県日光市湯西川温泉749
TEL:0288-98-0011
URL:http://www.bankyu.co.jp/

「本家伴久」の女将は全国平家会会長でもある。とても上品で凜とした女性だ

1666年創業、平家直系の老舗旅館
「本家伴久」の囲炉裏料理は「平家隠れ館」で

1666年、湯治宿「伴久旅館」として開業。現在は平家直系25代目が継いでいる「本家伴久」。
玄関を入ると「いらせられませ」という声とともに迎え太鼓がドンドンと打ち鳴らされる。

1970年(昭和45年)に火災によって大部分を焼失してしまったが、再建の際に廃校が決まった小学校の木材などを使い、樹齢500年の姫小松の大柱などが残された。そのため、深く歴史が刻まれた趣きのある佇まいと個室が宿泊客の目を楽しませてくれている。
まるでタイムスリップでもしたかのような館内でゆっくりと体を休めることができるわけだ。

熱いものを熱いうちに食べていただくという発想から囲炉裏会席料理御膳が誕生した。
「本家伴久」が湯西川温泉での囲炉裏料理発祥の宿ともいわれている。
なかでも商標登録されている「一升べら」は、秘伝の味噌に山鳥を骨ごと砕いたものと山椒を加え、それをへらに盛って囲炉裏の炭火で焼くもの。ひとへらでお酒が一升飲めるということから女将が発想・命名したという。
商標登録しているからといって、ほかの宿で出してはいけないということではないという。
「それで湯西川の名物になるのなら、それでいいんです」
と女将は笑う。
とはいっても「本家伴久」の一升べらの盛りはほかでは真似できないようなボリュームだ。


囲炉裏料理は、湯西川に架かる吊り橋「かずら橋」を渡った「平家隠れ館」でいただく。
串に刺した山や川の幸を赤く焼ける炭火にかざし、体を温めながら料理が食べられる。
一升べらのほかには鮎塩焼き、厚揚げの生姜醤油づけ、そして板台餅が並ぶ。
板台餅というのは米がとれない土地のため餅米が手に入らなかったことから硬めに炊いた白米を板の上でついたものだという。焼くと本当にお餅のような食感になる。

炉を囲んで食べる囲炉裏料理。ふたり以上で話をしながら食べるのがおすすめ

一升べら。へらにこんもりと盛られている。炭火に近い下の部分から焼けてくるので、そこから少しずつ食べていく。骨ごと砕いている食感があり、肉を感じる

板台餅。焼くと軟らかくなる

鮎塩焼き。川魚を炭火で自分好みに焼いて食べる。平家の人々は河原で石焼きにして食べていたのだろうか

会席料理+鹿とキジの刺身

囲炉裏料理といっても炭火で焼くものだけを食べるわけではない。会席風の食事も含めて囲炉裏料理と呼んでいる。
八汐鱒や生湯葉の刺身といった栃木の名物や湯西川らしい鹿の叩きの酢の物、味噌仕立ての豚肉の鍋物、海老芋まんじゅうと鮎山椒煮など盛りだくさんだ。

さらに鹿とキジの「深山の幸・刺身盛り」などのオプション料理も多彩に揃えられている。もちろんお酒も種類が豊富だ。

食事時には女将の挨拶もある。
平家の「平」の字にある2本の横棒を下にずらすと「半」という字になり、「平家の人」という意味で横に「人」の字を置き、「伴」となる。これは直系の名字として残っている。
さらに平家の人の血が「久しく」繋がるようにという思いを込めて「伴久」という名がついたという。

追うものに見つからぬよう静かに生活していたという平家落人。
「平家の者は騒ぐことを好みません」と静かに語る女将の上品さは、そんなところから受け継がれているのかもしれない。

会席料理も手が込んだ湯西川らしさが感じられる品々

八汐鱒、生湯葉、蒟蒻の刺身

自家製味噌を作る宿「彩り湯かしき 花と華」の
囲炉裏料理は、現代風アレンジの「平家お狩場焼」

清潔感に溢れ、抜群のホスピタリティでもてなす宿「彩り湯かしき 花と華」の囲炉裏料理は、300有余年の歴史ある建物でいただける「平家お狩場焼」と名付けられたもの。
実に雰囲気のある伝統的な場所で歴史の重さを感じながらおいしい料理を楽しめる。

囲炉裏料理は湯西川温泉の郷土料理といえるが、その味は作り手によってそれぞれ違うのが特徴。
「花と華」でもっともほかと違うのは、一升べらかもしれない。というのは、「花と華」には味噌造り道場が併設されており、昔ながらの味を現代まで受け継いで天然醸造・手作り寒仕込み秘伝の自家製味噌を作っているからだ。一升べらにはこの味噌を使い、肉などの具材は入っていない。ご飯に乗せてもお酒のつまみにちびちび舐めても相性は抜群なのだ。

さらに鱒をひと晩自家製味噌に漬け込んだものも囲炉裏で焼いていただく。味噌の香りがほんのり残り、身がほろほろとほぐれて食が進む。
うるち米を使ったばんだい餅に一升べらの味噌をつけて食べることもできる。
囲炉裏の炭火焼のほかには、とちぎ和牛の鉄板焼きや高原豚のセイロ蒸し、鹿の叩きサラダなどの会席料理が用意される(時季やプランによってメニューは変更)。

囲炉裏料理の味はそれぞれ違うが、みんなで囲炉裏を囲んで楽しく食事をするというスタイルはどこも同じだ。

一升べら味噌、鱒味噌焼き、地鶏串、蒟蒻串、ばんだい餅

囲炉裏を囲んで、横に会席料理。話が弾む

リピーターが多い老舗宿「平家の庄」で
心づくしのおもてなし、そして囲炉裏料理

1718年創業の「平家の庄」は、狸や天狗の装飾も多く、清潔で楽しげな雰囲気を感じさせてくれる老舗。
囲炉裏料理はやはり秘伝の味の味噌を使った一升べらなどの炭火焼と会席膳がいただける。
ヤマメやイワナなどの川魚のお造りは、生け簀からあげたばかりの鮮度抜群の一品を提供。
地鶏も自家牧場でしっかりと筋肉をつけた引き締まった身をした鶏本来のおいしさが感じられるものを厳選している。


若女将の明るい笑顔が多くの宿泊客の心を掴み、それがリピーターになることへと繋がっている。
料理とともに若女将のもてなしに触れて元気になって帰りたいという宿泊客が多いのだ。


「料理を楽しむ」ということは、元来そういうもの。ただ味がいいだけではなく、それを提供してくれる人の心遣いがどれだけ感じられるか、ということも大きな割合を占めるのだ。
さらに、その料理を誰と一緒に食べるか、誰と話をしながら食事をするかということも大事な要素。囲炉裏料理は、その串が立てられた炭火を囲む人と、楽しく語らいながら食べたいもの。
好きな人、気のおけない人と湯西川の郷土料理をゆったりとした気持ちで楽しんでほしい。

「平家の庄」の炭火焼囲炉裏膳コース

岩魚の姿造りは生け簀からあげたてでピチピチ新鮮

雰囲気のいい囲炉裏と障子の部屋もある

記事で紹介したグルメスポット

彩り湯かしき 花と華

「彩り湯かしき 花と華」

歴史ある旅館でありながらエントランスやロビーはとても綺麗で清潔感に溢れている。