日光の歴史を楽しんだり、温泉やグルメを堪能しながら観光名所を巡る日光の観光情報誌

[2013年9月 更新]

「日光 髙井家」で
日光名物の湯波料理をいただく

日光といえば湯波。しかし京都の名物も湯葉。その違いは? 伝わった経緯は? そして湯波を土産にする場合のおすすめ店と、湯波を中心とした丁寧な日本料理がゆっくり味わえる老舗の名店を紹介。

日光名物いろいろあれど、
まずは湯波のあれこれを味わいつくそう

「ゆば」といえば京都と日光を思い浮かべる人が多いと思う。
約1200年前に中国から持ち帰られたといわれ、最初に伝わったのが比叡山の延暦寺で、精進料理の材料として修験者たちに与えられていた。大豆のタンパク源を効率よく摂っていたということのようだ。
比叡山同様、日光山輪王寺も修験場となっていたため、ゆばは日光にも伝わった。基本的に門前町を中心に広まっていったようだ。修験者が山に入るときに、軽くて保存がきき、栄養価が高いゆばは重宝したというわけだ。
社寺でも僧侶や神官の食品として常用され、庶民に広まっていったのは明治に入ってからだった。

ちなみに京都では「湯葉」、日光では「湯波」と表記する。ここでは「湯波」と表記していくことにする。


湯波は大豆の加工品で、豆乳を熱したときに表面にできる膜を引き上げたもの。日光と京都では製法に違いはないが、引き上げ方が違うため、京都の薄く平たいものに対して、日光は2重に巻き上げたボリューム感のあるものとなっている。また、生で刺身のように食べるのは同じだが、自然乾燥させることが多い京都に対して、日光では揚げたものが多い。いずれも料理に使う食材となる。

「日光山輪王寺」

老舗のゆば屋で
生湯波を買ってお土産に

日光では多くの土産物屋で湯波が売られている。もちろんどこもおいしいのだが、ここはひとつ専門店でお土産を買ってみるのもいいのではないだろうか。
「日光湯波 ふじや」は、ゆば屋として120年以上の歴史がある湯波の専門店だ。
湯波だけでさまざまな種類の商品を扱っている。

やはりいちばん人気は、最初にできる生湯波をたっぷりの豆乳に浸した「ゆばトロ」(945円)だ。滑らかな食感でまろやかな滋味に富んだ逸品で、口のなかで広がる豆乳とのハーモニーも絶品。名前に偽りなしのトロっとした湯波が「ふじや」のオリジナル商品であることを証明している。
パック詰めになっているが、真空パックではないのでできるだけその日のうちに食べたほうがいい。

そのまま食べられるものとして人気No.2といえるのは、オリジナルの甘味噌を湯波で包んで串に刺して揚げた「串湯波」(10本入り777円、17本入り1155円)。お茶請けとしても酒のつまみとしてもしっかりと役目を果たす湯波菓子だ。
こちらは常温で約10日間保存できる。
ほかにも砂糖をまぶした甘い湯波菓子や、生湯波を重ねて巻いて棒状にしたものを輪切りにして揚げた揚巻湯波などもある。こちらは煮物などに使う料理用だ。
「ふじや」のホームページでは調理法も紹介している。
http://www.nikko-fujiyayuba.com/

「日光湯波 ふじや」の「ゆばトロ」

完全予約制の
歴史ある料理屋で湯波を堪能

お土産用の湯波を買って家で日光の味を堪能するのもいいのだが、やはり日光にいるのであれば新鮮な本格的湯波料理を堪能したくなるというもの。
湯波そばや湯波丼などはお食事処でも食べられるのだが、さまざまな調理法による湯波料理を、落ち着いた雰囲気のなかで食べるのもいいのではないだろうか。

「日光 髙井家」。
江戸時代後期の1805年(文化2年)に蕎麦屋として創業。以来約200年間、日光二社一寺の御用達となり祭礼料理などを作ってきた。
現在は名物となった湯波料理を、観光客のみならず、何世代にもわたる地元のお客様や文化人の方々などに提供、長く愛される店となっている。

個室から披露宴ができる大広間までが用意され、歴史を感じさせる家屋で、遠くの山を見ながらゆったりと食事が楽しめる。とても贅沢な空間だ。
ランチのコースを紹介しよう。

「日光 髙井家」。庭園の向こうの山に低く雲がかかっていた。落ち着ける空間

「日光 髙井家」。詳細ページでも紹介

観光地の喧噪から離れ、
上品な湯波料理をいただく

上品な女将さんに案内されたのは10畳に6人掛けのテーブルがある個室。
料理名は女将さんに言われたままを書いていく。
まず運ばれてきたのは、「山芋豆腐」。正式には「養老豆腐」というらしい。すり下ろした山芋を豆腐のように固めたもので、オクラと梅肉が乗せられている。山芋とオクラのネバネバで元気が出そうだ。

次は「鴨と湯波の茶碗蒸し」。日光では鴨肉もよく料理に使われる。しっかりした歯応えがある鴨肉と柔らかい湯波の組み合わせだ。シンプルだがとても丁寧に作られた茶碗蒸しだ。

ここでついに登場、「生湯波刺し」。正式には「引き上げ湯波のお造り」。八汐鱒の刺身も添えられている。八汐鱒は栃木県で養殖されている魚だ。ねっとりとした食感の八汐鱒と、とろけるような湯波の食感が楽しめる。大豆の香りがほんのり感じられる新鮮さだ。添えられた日本かぼちゃも上品。

「引き上げ湯波のお造り」。少しずついただく。お酒好きは日本酒が呑みたくなるはず

どれもしっかりと手間をかけた
心のこもった料理

次に運ばれてきたのは「ニジマスの燻製」。正式には「虹鱒のいぶし焼」。表面は燻されていて堅めなのだが、箸でホロホロと崩れる。燻製ならではの香ばしさが口中に広がり、しっかりとした肉を食べていると、アユやイワナの影に隠れがちだったニジマスの評価が急上昇しそうだ。日本酒に合いそう。

次は「たぐり湯波のあんかけ」。たぐって巻いた生湯波を出汁でゆっくりと温め、キノコ類の入った葛あんかけでいただく。湯波の煮物だ。巻かれているのでわかりづらいかもしれないが、湯波の量がけっこう多い。少しだけ入っている柚子の皮の香りがおいしさをさらに演出している。

豆腐を湯波で巻いて揚げた、オリジナルの「湯葉巻き揚げ出し豆腐」が登場。柔らかい絹ごし豆腐の周りを、揚げたことで少しだけ強さを増した湯波が守っている大豆兄弟のような料理。豆腐を湯波で巻くという手の込んだ調理に感心していると、次の料理にも驚かされた。

湯波の酢の物だ。かんぴょうやキュウリを湯波で巻き、エビやホタテとともにいただく。ここにきてさっぱりしたものを食べて、軽く流れをリセット。そのわけは次の料理への布石だった。

「たぐり湯波のあんかけ」。温かくて胃袋と心がホッとするような料理

デザートまで大満足のランチコース

料理の締めは、蕎麦。
もともと蕎麦屋だった「日光 髙井家」。現在は今市のほうから手打ち麺を仕入れているという。この蕎麦のための酢の物だったのだと思うことにした。

最後はデザート。「黒砂糖ゼリー 豆乳がけ」と抹茶。
黒砂糖のゼリーの甘さをいい塩梅に抑える豆乳。ナイス・コンビネーションだ。このゼリー、土産にしたいくらい。


個室から七福神が祀られた庭園が大きく視界に入ってくる。
途中、雨が降り出したのだが、女将さんが静かに言う、「雨の日光もいいですよ」という言葉が優しく響いた。
もちろんひとりでも予約可能なのだが、ぜひ2人以上で食事を楽しんでほしいと思う。ひとりだと、きっと、「うまい」「おいしい」という口をついて出た感想が誰もいない部屋にこぼれ落ちて、ちょっとだけ寂しい気持ちになるかもしれないから。感想を言い合える、気のおけない人と訪れて、歴史が染み込んだ家屋でのおいしい料理をじっくりと味わってほしい。

庭園には七福神のうちの6人がいる。あとひとりは玄関のほうにいる

記事で紹介したグルメスポット

日光 髙井家

「日光 髙井家」

1805年(文化2年)に創業した、200年以上の歴史がある料理屋。当初は「栗山蕎麦 髙井屋」として開業。