ブナと生き、雪と暮らす町
南会津郡只見町は、標高1000m級の山々と広大なブナの原生林に囲まれた、日本の原風景ともいえる自然環境を有している。町の面積の約9割以上が、ブナやミズナラ、トチノキなど広葉樹林帯の山林が占めるほどだ。
なかでも只見町のブナ林は、その規模や原始性で国内随一といわれている。この地のブナは、人がなかなか分け入ることのできない奥山に生息しているため、手つかずの環境が残され、豊かな生態系を生み出しているのだ。
そのため、只見町のブナ林には全国からたくさんの自然愛好家たちが訪れる。
また、国から特別豪雪地帯にも指定されるほど降雪量の多い地域でもある。山間部はもちろんだが、人々が暮らす里でも例年3mを超える積雪となる。
降雪期間も10月から翌年の5月までと長く、1年の半分以上を雪とともに暮らす町なのだ。
国内有数のダムが名物
豪雪地帯だということは、つまり豊かな水に恵まれた地域であるともいえるだろう。只見町には、年間を通して多雪による豊かな水、そして美しい渓流と川が流れる。
町内を流れる川に、尾瀬を源流とする只見川とその支流である伊南川があり、人々は昔からその流域で暮らしてきた。
かつて、只見川の流域には「田子倉集落」という集落があった。マタギの里であり、天然資源に恵まれたその地は、桃源郷とも呼ばれていたという。
ところが1959年(昭和34年)、大戦後の経済復興のために押し進められたダム建設により、田子倉集落は湖底へ沈むことになってしまう。
こうして生まれた発電用のダムが「田子倉ダム」だ。ダム湖である田子倉湖の総貯水容量は国内第3位の規模を誇る。
田子倉湖は、初夏の新緑や秋の紅葉など四季折々の自然の美しさが多くの観光客を引き寄せ、湖上には遊覧船が運航し、釣りやカヌーなどが楽しめるアクティビティスポットになっている。
只見町には、田子倉ダムの下流約3km先にも「只見ダム」や「大鳥ダム」などがある。ダムはこの町の名物といえるだろう。
名所旧跡や名物を見てみよう
ダムの建設によって大きく様変わりすることとなるが、かつての只見は養蚕や製塩が盛んで、多くの鉱山もあった。
海に面していない只見では、どのようにして製塩を行なっていたのだろうか。塩沢にある「山塩資料館」では、明治の終わりごろまでと戦後の一時期に只見で行われていた製塩の様子がジオラマで解説されている。
時代は遡り、1311年(応長元年)に建立された「成法寺観音堂」は、町内に現存する最古の木造建築だ。豪雪地特有の当時の建築様式を見ることができる。
さらに遡って、縄文後期から弥生中期にかけての集落跡が見られるのが「窪田遺跡」だ。
そびえ立つ山々に川の流れ、そして雪。只見の人々は、昔からこれらの自然環境と共存しながら暮らしを守ってきたのだ。
そんな只見を訪れたら必ず食べてほしいのが、古くからこの地に伝わる郷土料理の「お平(ひら)」。盛り付けにも深い意味があるもてなし料理だ。
只見は、豊富な雪どけ水のおかげで、おいしい稲穂が育つ奥会津の米どころでもある。昼夜の寒暖差を利用して栽培されたトマトやアスパラガスも美味。
見どころ、そして食べどころ満載の只見町。たっぷりと時間をかけて楽しみたい町だ。