会津の歴史を楽しんだり、温泉やグルメを堪能しながら観光名所を巡る会津の観光情報誌

[2014年5月 更新]

会津の隠れた名物郷土料理「鯉の甘煮(うまに)」を食べる

鯉料理が盛んに食べられていた会津だが、現在は鯉を出す店がかなり減ってしまった。活魚料理なので、腕のいい料理人が必要だというのも一因だ。「鯉の甘煮」を食べられる名店を紹介しよう。

※ここで表記されている価格は2014年4月上旬の取材時点のものです。

会津の隠れた名物郷土料理「鯉の甘煮(うまに)」を食べる

福島県会津地方で食べられるご馳走
鯉の甘煮、鯉こく、鯉のあらい

鯉料理と聞いて、多くの人が最初に思い浮かべるのは「鯉こく」ではないだろうか。鯉を出汁に使った味噌汁で、鯉の切り身が入っていたりする。
しかし、福島県会津地方では、鯉料理といえば別のものがいちばんに挙げられるかもしれない。
「鯉の甘煮(うまに)」だ。

会津で鯉がよく食べられるようになったのは、会津藩家老の田中玄宰が天明の大飢饉対策をきっかけに、藩政改革を行ったことからといわれている。1787年のことだ。
各家庭にある庭に池を作り、鯉を飼うことを推奨して、何かあったときに鯉を料理して食すことにしたのだ。鯉の養殖のはじまりともいえる。
明治時代までは、やはり「鯉こく」として食べることが多かった。当時は貴重な砂糖をたっぷりと使って煮込む「鯉の甘煮」はかなりのご馳走で、祝いや祭りなどで出される主役級の料理だったといわれている。
会津の殿様の膳にも上がっていた。戊辰戦争での鶴ヶ城籠城の際にも城のなかで鯉が食されていたとも伝えられている。

また、祝いの席以外で鯉を勧められたのは、妊婦だった。不足になりがちなタンパク質を摂れることで母乳の出がよくなるのだ。
現在でも妊婦には鯉を食べさせるという習慣は残っている。

自宅の庭の鯉を調理する時代もあったのだが、臭みの少ない養殖の鯉を卸す鯉屋もあり、それを買ってきて調理するのが主流となっていった。しかし、徐々に家庭で鯉料理を作ることも減り、鯉料理は旅館で提供されるものという認識に変わってきてしまった。
さらに現在では伝統の郷土料理であった鯉料理を出す旅館も激減してしまった。
それでも鯉料理をなくしてはいけないと考え、おいしく提供してくれているところはある。そんなお店を紹介しよう。

鯉は活魚料理。新鮮なものを調理する

鯉は活魚料理。新鮮なものを調理する

おかずの主役、「鯉の甘煮」

おかずの主役、「鯉の甘煮」

「向瀧(むかいたき)」

東山温泉郷唯一の伝統継承湯宿
「向瀧」でいただく鯉料理

740年代の天平年間に発見されたともいわれる会津の名湯、東山温泉。かつてはここの温泉宿のほとんどで鯉料理が出されていた。しかしそれもリゾート開発後、激減してしまった。

会津藩上級武士の指定保養所となっていた「狐湯」は、1873年(明治6年)に平田家が引き継ぎ、「向瀧」として営業。現在でも代々続いている家業として湯守をしている。伝統を正しく継承している唯一の温泉旅館である。

ここ「向瀧」では夕食に鯉料理が食べられる。もちろん鯉以外の郷土料理もたくさん並ぶ。
「向瀧」オリジナルの純米酒酒粕に赤紫蘇シロップを入れた甘酒のような食前酒を飲んだら、さっそくいただこう。
郷土料理として知られるにしんの山椒漬けや会津地鶏の味噌鍋、原木椎茸と手作りがんもなど、すべて手の込んだ料理だ。
かわいい手塩皿でいただく「こづゆ」もお祝いの膳に並ぶ郷土料理のひとつ。
ホタテの貝柱から出汁をとった優しい味だ。里芋、人参、椎茸、木耳、細筍、糸蒟蒻、豆麸、貝柱が入っている。秋は銀杏も入るらしい。
そして「鯉のあらい」ならぬ「鯉のたたき」が並ぶ。小皿の醤油をかけて食べるよう説明される。
「鯉のたたき」は「向瀧」考案の一品。高級な白身魚という印象。少し重めの醤油は刺身醤油だろうか。これは魚ばかりにかかり過ぎると味が濃くなってしまうので注意。お好みでかけずにつけて食べてもいいだろう。

そして「鯉の甘煮」。おしながきには、「会津藩直伝! 江戸時代からの伝承の一品」という文字がある。「向瀧」では活きたまま仕入れた鯉を生簀に放し、調理している。
ボリュームもあり、肉もしっかりとしている。

タンパク質、タウリン、コラーゲンなどを多く含む薬効料理の「鯉の甘煮」を食べて、100%源泉かけ流しの温泉に浸かったら、確実に体調がよくなりそうな気がする。

「向瀧」の「春の献立」の一部

「向瀧」の「春の献立」の一部

「鯉の甘煮」。じっくりと煮込まれた筒切りの鯉。肉も多い

「鯉の甘煮」。じっくりと煮込まれた筒切りの鯉。肉も多い

「鯉のたたき」。くせはまったくなく、柔らかい

「鯉のたたき」。くせはまったくなく、柔らかい

「にしんのさんしょう漬け」。こちらは硬め
「こづゆ」
「雪中キャベツと会津地鶏の味噌鍋」
揚げ物「原木椎茸と手作りがんもで会津地鶏をつかまえた」
デザート「さちのか」
「向瀧」
「向瀧」玄関。登録有形文化財の碑がある
個室でゆったりと食事。ふたり以上は大広間の場合もある

店舗データ

向瀧

【向瀧】
住所:福島県会津若松市東山町大字湯元字川向200
URL:http://www.yadoya.com/
TEL:0242-27-7501
●会津鉄道会津線乗り入れの会津若松駅よりタクシーで約15分、またはまちなか周遊バス「ハイカラさん」「あかべえ」で東山温泉バス停下車徒歩約2分

「手打ちそば・うどん 徳一」

会津の新名物となってほしい
「鯉の天ぷら」と「鯉の天重」

南北に走る千石通りの少し東側にある「手打ちそば・うどん 徳一」は1980年(昭和55年)創業。地元の人の食事処としてメインの手打ち蕎麦のほかにも、さまざまな料理を提供している。

昔はもれなく鯉料理を出していた旅館が、軒並みやめてしまった。それが鯉料理を出すようになったひとつのきっかけでもあるという。地元出身の店主は、伝統の郷土料理が食べられなくなってしまうのが残念だと感じたのだ。
会津の鯉屋さんから仕入れた「鯉の甘煮」(750円)は間違いない味。その理由はさらに下で後述する。
そしてその鯉屋さんの提案ではじめたのが、珍しい「鯉の天ぷら」だ。天ぷら単品は  650円。
「鯉の天ぷら」についてくるのは、天つゆではなく塩。この塩は、なんと海塩ではなく、大塩裏磐梯温泉の温泉水を薪窯で煮詰めた温泉塩とのこと。「会津山塩」という商品で、基準通りに山塩が使用されている店や商品には、「会津山塩認定シール」が貼られる。「徳一」ではお土産用の「会津山塩」も販売している。

「鯉の天ぷら」(650円)は、「鯉の甘煮」のボリューム感や「鯉こく」に入っている切り身の骨が多いという印象をすべて覆す。
サクッとしているのは「徳一」の天ぷら技術によるもので素晴らしいのだが、その身の柔らかさと食べやすさは、知らずに食べたら鯉とはわからないかもしれない。まさに“恋”と似ていて、「あとで気づいたらコイだった」というものだ。

そしてご飯の上に天ぷらを乗せて甘辛のタレをかけたのが、これまた珍しい「鯉の天重」(1150円)だ。鯉の天ぷらが5切れも乗っている。
タレによく合うし、しつこさがなくあっさりとしている鯉の天ぷらはいくらでも食べられそう。
天重のタレは、もちろん25年継ぎ足して使っている秘伝のタレだ。

会津若松でも鯉の天ぷらが食べられるのは、2~3軒だという(2014年4月現在)。
「鯉の天ぷら」「鯉の天重」、いずれも新しい会津の名物となってほしい。多くの人に味わってもらいたい料理だ。

新メニューの「鯉のミニ重セット」(1100円)は蕎麦(温or冷)と鯉のミニ天重がセットになった人気商品。ミニ天重は鯉の天ぷらが3切れ。

「徳一」で食べられる郷土料理については、「郷土料理が食べられる店、お土産にできる店【手打ちそば・うどん 徳一】」コーナーでも紹介。

「鯉の天重」。味噌汁と漬け物つき。漬け物は「三五八漬け」(その他のグルメ参照)

「鯉の天重」。味噌汁と漬け物つき。漬け物は「三五八漬け」(「郷土料理が食べられる店、お土産にできる店」参照)

家の近くにあったら、結構通ってしまいそうな店だ。海老の天重よりもこちらが好きという人も多そう

家の近くにあったら、結構通ってしまいそうな店だ。海老の天重よりもこちらが好きという人も多そう

天重のタレがかかった天ぷらは、写真のように箸でサクッと切れる

天重のタレがかかった天ぷらは、写真のように箸でサクッと切れる

「鯉の天ぷら」。「会津山塩」でいただく

「鯉の天ぷら」。「会津山塩」でいただく

これが天ぷら用の鯉。特別に見せてもらった
蕎麦も天重もおいしい「徳一」。ほかの料理も間違いなさそうだ
テーブル席と座敷がある。ある程度の団体でも大丈夫
座敷席。落ち着ける

店舗データ

手打ちそば・うどん 徳一

【手打ちそば・うどん 徳一】
住所:福島県会津若松市東千石1-5-17
URL:http://www.aizu-tokuichi.com/
TEL:0242-28-5681
営業時間:11:30~15:00 17:00~20:30
定休日:月曜
●会津鉄道会津線乗り入れの会津若松駅より徒歩約30分

「あら池」

座敷でゆったりといただく鯉料理
数人で来て鯉のフルコースもいいかも

七日町通りから神明通りを越えて少し東へ進んだところを南へ下りた場所にあるのが、老舗の「あら池」。創業は1930年代で、1950年代にこの場所へ移転してきた。
表から店を見ると小さな定食屋のようだが、実はかなり奥行きがある、明治から大正時代に建てられた大きな、そして残すべき建物なのだ。通りがかっただけでは気づかないかもしれない、貴重な建造物のひとつだ。かつては呉服屋、旅館、ダンスホールなどが営まれていたという。

表の入口から左の脇道をちょっと入って玄関を上がると、廊下が伸びていて、座敷の個室が3部屋ある。混んでいないとき、そして、前もって連絡をしておけば、座敷でゆっくりと食事ができるのだ。
予約制の店か、というとそういうわけではないのだが、そこは鯉料理を出している店ということだ。
川魚はやはり活魚料理。海の魚と違って、死んだものを調理すると臭みが出てしまって食べられたものではないのだ。なので、鯉料理を食べるときは、事前に連絡してほしい、ということだ。
「鯉の甘煮」を出すとなると、1尾捌いて4切れ作れる。大きな店なら問題はないのかもしれないが、「あら池」は割と小さい店なので、もし1人前しか注文がなかったら、残りの3切れは廃棄することになる可能性が高い。鯉にも申し訳ないし、できるだけそういう無駄はなくしたいのだろう。とはいっても、1人前お断りというわけではないので、まずは連絡を入れてみてほしい。「あら池」3代目の優しい店主が相談に乗ってくれるはずだ。

うなぎ・鯉料理の「あら池」

うなぎ・鯉料理の「あら池」

店の奥に座敷の個室が並ぶ

店の奥に座敷の個室が並ぶ

座敷でゆったりとくつろいで、鯉料理をいただこう
2階にダンスホールがあった時代も。進駐軍が土足で上がっていたという階段

鯉料理各種と鰻の蒲焼き
ご飯もお酒もすすむ「あら池」

「鯉の甘煮」(700円くらい。大きさによる)。肉が意外と、予想以上に柔らかく煮込まれている。
この店は古くから付き合いのある郡山の鯉屋さんから仕入れているという。かつて取り引きしていた会津の鯉屋さんが店を閉めてしまったのだ。仕入れた鯉は生け簀に放し、注文(予約)が入ると店主が捌く。
「鯉こく」(600円)は筒切りにした鯉から出汁をとった味噌汁。切り身が入っている。この汁に鯉の栄養がたっぷりと入っているということだ。
「鯉のあらい」(700円)は、とてもあっさりしている。コリコリしているかと思いきや、そうでもなく、意外と柔らかい。ただし、時間が経つと臭みがでるので注意。酢味噌でいただくのが基本だと店主が言う。生姜を酢味噌に入れて混ぜてどうぞ、とのこと。辛子を入れるところもあるらしい。

「あら池」は鯉料理と同時に鰻も出している。というか、鰻を食べるお客さんのほうが多いくらいだ。
鰻も生け簀から揚げたものを捌いて出す。鰻料理の基本だが、25~30分くらいは待つ覚悟を。
うな重はなく、「うな丼」。2000円だが、座敷ではなく入口近くのテーブル席で食べる場合は、1800円になるという。いずれも肝吸いと漬け物つき。甘めのタレでご飯もすすむ。

「鯉の甘煮」。鱗のまま煮付けている

「鯉の甘煮」。鱗のまま煮付けている

「鯉のあらい」。お酒がほしくなる

「鯉のあらい」。お酒がほしくなる

「鯉こく」。いまでも家庭で作られることが多い鯉料理のひとつ
「うな丼」。ちょっとかわいい小ぶりな蒲焼き
懐かしい見た目の「うな丼」だ
肝吸いつき

店舗データ

あら池

【あら池】
住所:福島県会津若松市馬場町1-50
TEL:0242-22-0889
営業時間:11:00~19:30
定休日:不定休
●会津鉄道会津線乗り入れの七日町駅より徒歩約18分

「澤井鯉店」

お店からも地元の人からも信頼が厚い鯉屋さん
「鯉の甘煮」やガラなども売っている

かつてはたくさんあった会津の鯉屋さんも、いまではかなり少なくなってしまった。
そのなかでも前述した「向瀧」「徳一」に鯉を卸しているのが、「澤井鯉店」。各店舗からの信頼が厚い店なのだ。
創業は1928年(昭和3年)ごろともいわれ、90年近い歴史がある店だ。活魚としての卸しのほか、切り身や調理したものも販売している。

「鯉の甘煮」の筒切りしたものの真空パック(500円)と冷凍(350円)、そして尻尾のほうの身を骨切りした真空パック(300円)などがある。骨切りしたものはそれほど大きな肉ではないが、とても食べやすい。
「徳一」の「鯉の甘煮」はここから仕入れているものなのだ。ゆえに、味は間違いない。

また「鯉のあらい」も事前に連絡を入れれば買える。約1kgで2000円。70切れほどになる。生の切り身は5切れ1500円。

本来ならば、「こづゆ」「にしんの山椒漬け」「棒たら」など、「会津といえばコレ」といわれている郷土料理のなかに「鯉の甘煮」も仲間入りしてしかるべきなのだ。ちょっとしたタイミングの悪さで、同様に売り出されることがなかっただけで・・・・・・。

最近は家庭で鯉料理を作ることが減ってしまったのが残念と語る3代目ご主人は、平成に入ってから旅館でも鯉料理を出さなくなってしまい、このままでは郷土料理としての鯉料理がなくなってしまうという不安さえあったという。
しかし営業努力もあり、「徳一」などでの「鯉の天ぷら」というメニューが生み出された。

お店にもガラや甘煮などを買いに来る高齢の方たちが次々に訪れる。栄養がある「鯉こく」を作ると言っていた。
ご主人の澤井さんが笑いながら言う。
「高齢の方たちは、元気なときは来ないんですよね。体調が悪くなってくると、栄養をつけなきゃと言って買いに来ます」

薬用魚でもある栄養価の高い鯉。そのおいしさをもっとたくさんの人に知ってもらいたいものだ。

「澤井鯉店」

「澤井鯉店」

信頼される店

信頼される店

調理されたものを販売

調理されたものを販売

骨切りされた尻尾のほうの甘煮。食べやすい

骨切りされた尻尾のほうの甘煮。食べやすい

養殖場は別の場所にある
鯉を卸して90年

店舗データ

澤井鯉店

【澤井鯉店】
住所:福島県会津若松市東栄町6-49
TEL:0242-27-0635
営業時間:8:00~17:00
定休日:日曜・祝
●会津鉄道会津線乗り入れの七日町駅より徒歩約22分

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