会津の歴史を楽しんだり、温泉やグルメを堪能しながら観光名所を巡る会津の観光情報誌

[2013年8月 更新]

桧枝岐村の山人(やもうど)料理とは

南会津の秘境の村、檜枝岐村に代々伝わる山人(やもうど)料理。米が作れない痩せた土地で生まれた独特の蕎麦をはじめ、ほかでは食べられない郷土料理をいろいろ紹介。お土産に最適なグルメ商品も教えちゃうよ。

桧枝岐村の山人(やもうど)料理イメージ

南会津の秘境、檜枝岐村(ひのえまたむら)の
意外とヘルシーな山人(やもうど)料理

東武スカイツリーラインから東武鬼怒川線、そして野岩鉄道を経て会津鉄道へ入ったひとつ目の駅、会津高原尾瀬口駅から会津バスに乗車。1時間20分ほどで到着する福島県南会津郡檜枝岐村。
尾瀬国立公園への玄関口といわれている檜枝岐村は、約98%を林野が占めていて、この地に暮らす人たちは古代から狩りをして生活していた。近代では立派な職業のひとつとして行われていた時代もある。熊や鹿の狩猟時期はおもに秋口から翌年の雪解けまでで、春から夏は山菜や木の実、川魚を獲っていた。
また、檜枝岐村は山々に囲まれた高地にあり、稲作に適さないやせた土地という環境であったため米を作ることができなかった。その分、山菜やキノコ、山や川で獲る生き物、寒冷地でもよく育つそばなどを使ったさまざまな料理が生み出され、現在まで伝え継がれてきている。これらの料理は、山に入って働く男たちのことを指す「山人(やもうど)」から由来し「山人料理」と呼ばれている。

「駒口」の夕食。そばとご飯もつく

聴き慣れない「裁ちそば」「はっとう」

「裁ちそば」
そば、アワ、ヒエなどの農作物で自給自足をしていた檜枝岐村では、独特な製法のそばが生まれた。
つなぎをまったく使用しない生そばを2~3mmほどの厚さに伸ばし、折らずに何枚か重ねて布を裁つように包丁を手前に引きながら切ることからこの名がついた。通常のそばよりも平たい麺はコシがあり、「蕎麦」であることを強く主張しているような風味が楽しめる。

「はっとう」
そば粉と餅米粉を熱湯でこねて菱形に成型して茹でる。茹で上がったら会津の名産品である「じゅうねん(エゴマ)」をまぶす。モチモチとした食感で甘いお餅にそばの風味が感じられるのが特徴。昔、高貴な方がこれを食べたとき、そのあまりのおいしさに「平民が食べることを御法度とする」と言い出したことからこの名がついたとされている。

「駒口」の「裁ちそば」。以前は檜枝岐の女性は裁ちそばを打てないと嫁に行けないといわれていたほど。「駒口」の奥さんは村外の出身で、実際に裁ちそばの打ち方を勉強し、覚えたという

「そばの宿 丸屋」のはっとう。まんべんなくまぶされたエゴマがおいしい

そば粉で作る「つめっこ」「やきもち」「そばがき団子」

「つめっこ」
季節の野菜とニシン、または鶏肉などを煮込み、そば団子をちぎって入れた味噌汁。わかりやすく「そばすいとん」と言う人もいる。

「やきもち」
そば粉の皮のなかに、グミの実、山菜、漬物などの季節の具材を包み込んで焼く。12月27日に行われる、1年間の無事を感謝する「まっこはたき(悪魔を打つ)」という風習の日に供えられていた料理。

「そばがき団子」
そばがきはそば粉を湯に入れて練り、固めたもの。そばがき団子はそれを丸く成型したもの。

「駒口」のやきもち。なかに入っているのはグミの実。ちょっとすっぱい

山の幸、山菜とキノコ

「山菜料理」
山菜は、コゴミ、ウド、フキ、ミズナ、ユキザサ、ワラビ、ゼンマイなどがあり、茹でたりキノコなどと炊き合わせたり炒め煮や漬け物にしたりしていただく。フキの親分のような大きさのセンダイフキも檜枝岐の名物のひとつ。

「キノコ料理」
山菜同様、さまざまな調理法で食べられるキノコは、マイタケ、ナメコ、シメジ、ムキタケ、カノシタなどがある。多くの宿で提供されるアカキノコは鱒の身のような色をしていることからマスタケとも呼ばれている。キノコとは思えないような食感で、炒め煮などで調理される。

にしん、凍み豆腐、椎茸、絹さやとセンダイフキの炊き合わせ。「そばの宿 丸屋」

川と山の生き物もいただく

「岩魚」
水の綺麗な檜枝岐の清流やその支流に棲むイワナ。お刺身や塩焼き、たまに天ぷらで食べられる。焼いて味噌と和えた「岩魚味噌(いよみそ)」や干物の骨を熱燗に入れた「岩魚の骨酒」なども檜枝岐ならではの味わい。村には養魚場があり、岩魚を卵から孵して養殖している。宿や食事処に卸している。

「サンショウウオ」
ハコネサンショウウオ。昔から漢方薬の原料として重宝されていた。天ぷらや塩焼きなどで食べる、滋養強壮料理。珍味。春には卵を持ったメスが食べられるかも!?

「熊、鹿、兎」
祝い事などで食べられる熊飯や、最近は少なくなったうさぎ飯などの肉料理も山人料理ならではの種類が多い。檜枝岐村以外でも食べられる鹿肉料理もある。熊汁やうさぎ汁も野菜と煮込んだ貴重な料理だ。

「駒口」の天ぷら。中央、塩の近くにあるのがサンショウウオ。ご主人が捕ったものだ

「駒口」の熊肉炊き込み。少し堅めの肉。クセはない。こちらも貴重品です

檜枝岐村には地酒はないが、
酒を楽しむグルメ土産物はある

村の商店でお酒とつまみを買う

福島県南会津郡檜枝岐村には、土産物のほかにさまざまな酒を売っている店が2軒ある。「井桁屋商店」と「平野商店」だ。もちろん酒のほかにつまみやお菓子、日用品なども揃えている。
いずれの店も、酒の種類はかなり豊富。
日本酒の「檜枝岐」という銘柄があった。しかしこれは檜枝岐村の地酒というわけではない。それもそのはず、檜枝岐では稲作はいっさい行われていないのだ。
作っているのは檜枝岐村ではない。古くからこの地に暮らしている人に言わせれば、“となりむら”だ。南会津町らしい。

しかし、酒以外であれば檜枝岐産のものがある。しかも第52回全国推奨観光土産品審査会『農林水産大臣賞』受賞の商品だ。
「岩魚味噌(いよみそ)」。
檜枝岐の自然で育ったイワナを焼き、その細かくほぐした身を会津の芳醇な味噌に混ぜ入れたもの。これは酒のつまみにも白いご飯にも相性ばっちりだろう。
なんとひと瓶にイワナ1尾が入っているという。

岩魚味噌。「裁ちそば まる家」にも置いているし、尾瀬でも売っていた

檜枝岐産のアイデア商品も

そしてさらに、割と新しめの檜枝岐商品も誕生していた。
「いわなのこつ酒」というカップだ。
イワナの干物で、骨ごと熱燗に入れて骨酒にする商品はこれまでも、そしていまでも売られている。それに比べてコンパクトで手間いらずとなっているようだ。
カップに熱燗を1合の8割くらい入れ、底の部分にあるつまみのようなものをニギニギと揉む。するとそこに入っているお茶のパックのようなものからイワナの骨のエキスが出てきて、骨酒ができあがるという仕組みだ。
1カップで2~3合は飲めるらしい。
地酒ができないならイワナの骨酒のもとを作ってしまえ! という気概が気に入った。


また、檜枝岐の名物、裁ちそばも各土産物屋で売られている。乾麺が多いが、「裁ちそば まる家」では半生麺を売ることもある。

いわなのこつ酒。お酒は入っておりません

記事で紹介したグルメスポット

そばの宿 丸屋

「そばの宿 丸屋」

明治5年創業の老舗旅館で、敷地内には直営の「本家六代目 裁ちそば まる家」がある。